<ヤクルト3-2DeNA>◇8日◇神宮

 ヤクルトのバカボン七條祐樹投手(28)が、1年ぶりに笑った。昨年8月10日以来364日ぶりの勝利で、ヤクルトの連敗を3で止めた。試合後、手術した左膝には大きな氷、自打球を当てた左足甲にも氷が巻かれていた。「勝つためにずっとやってきて、ファームでも苦しんで。一番いい結果が出て良かった」。プロ2年目だが、もう28歳。苦労を笑顔で隠すお笑いキャラが、傷だらけで勝利をつかんだ。

 チームワーストの借金4。上位進出へ、崖っぷちで今季2度目の先発を託された。1回、緊張から制球が定まらない。先頭をストレートの四球で歩かすと、犠打後、中村に浮いたチェンジアップを運ばれた。「向かっていく気持ちだけは忘れないように」と切り替える。2回以降、7回まで内野安打1本に抑えた。

 新人だった昨季、4勝を挙げてチームの躍進を支えた。その陰で、左膝は悲鳴を上げていた。8月以降は勝てない日々が続き、昨年12月、左膝軟骨損傷の手術に踏み切った。歩くこともできない日々。キャンプは2軍スタート。交流戦ロッテ戦で今季初先発したが敗れ、1日で2軍に戻ってしまった。

 登板前日、「野球人生は長くないですから」と覚悟を決めた。観戦に来られなかった家族は、自宅で待っていた。千春夫人のおなかには第2子が宿っている。新人だった昨年2月、長男が誕生し「バカボンがパパになった」と評判だった。来年2月には、2児のパパになる。出発の朝。「頑張ってきてねって。いつも通りの感じでした」。

 勝ったことで、次がある。3位広島との直接対決、15日に先発予定。新球ツーシーム、チェンジアップなどで投球の幅を広げ、勝利につなげた。苦しんだ1年間、支えになったことは「やっぱり野球が好きという気持ちです」。高校野球にもオリンピックにも負けない熱い思いが力になった。【前田祐輔】