<阪神0-1広島>◇1日◇甲子園

 孝行息子が誕生した。広島今井啓介投手(25)が、プロ初完封で2勝目を挙げた。自己最多134球の力投。最後は天敵ブラゼルから自身初の10個目の三振で締めた。チームの完封は4月6日DeNA戦(横浜)で前田健太投手(24)がノーヒットノーランを達成して以来。初のCS進出に向け、頼れる男がまた1人増えた。

 悪夢を払拭(ふっしょく)した。「行きましょう」。今井は1-0の9回1死から二塁打を浴びた直後の円陣で、気持ちを入れ直した。2死までこぎつけると、打席には天敵ブラゼル。前回登板した8月26日の同カード(マツダスタジアム)で3ランを浴び、白星を「消された」相手だ。

 「それは思い浮かんだけど、力んではいけないと思った。一塁も空いていたし、フルカウントだったし、ワンバウンドでもいいと思って投げたら、一番いいボールが行きました」

 決め球のフォークにブラゼルが空振りすると、笑顔でガッツポーズ。自身初の2ケタ奪三振で初完封を飾った。

 甲子園は縁起のいい場所だ。プロ4年目だった09年9月18日阪神戦で5回1/3を3失点で初勝利を挙げた。鮮明に覚えているのが、試合後のヒーローインタビューでの一幕。歓喜の声を届けるはずが、敗戦に怒り、フェンス際に詰めよっていた阪神ファンからヤジを飛ばされた。「どこで勝ってくれてんねん」。その言葉で頭の中は真っ白。「何を言ったかは覚えていないんです」と当時を苦笑いで振り返る。そして、この夜も阪神ファンに再びヤジを浴びることになった。

 野村監督は開口一番「やりやがったな」とヒーローをたたえた。ミコライオが不在で、リリーフ陣も疲れが見える中での価値ある完封勝利。4位ヤクルトとは依然2ゲーム差。ラッキボーイの誕生が、チームを勢いづける。【鎌田真一郎】