<ヤクルト10-4阪神>◇26日◇神宮

 感涙のホームランだ。今季限りで引退する阪神金本知憲外野手(44)が、9回代打で通算476号のソロアーチをかけた。着弾した右翼席はヤクルトファンもバンザイ。涙ぐむ虎党もいた。通算1521打点とし巨人長嶋に王手をかけ、ラスト7試合に臨む。若手に切り替えた試合は力負け。未来を背負う若虎たちにカツを入れる1発でもあった。

 金本のアーチに神宮が歓喜した。7点ビハインドの9回1死、ヤクルト増渕の4球目をたたいた。弾丸ライナーで右翼フェンスギリギリに飛び込む6号ソロ。通算476号の瞬間、ヤクルトファンもバンザイ。ボールを拾った男性は、周囲の観客に取り囲まれ、記念ボールの撮影会が始まる騒ぎになった。虎党の女性は感激のあまり涙ぐんでいた。神宮の杜が、アニキの1発に酔った。

 金本

 ほんとにやめるよ。ヤクルトファンの声援がうれしかった。こんな試合やから、ホームランが一番お客さんがね。

 前日25日にCS進出の可能性が完全消滅し、2年連続Bクラスが確定。この日から若手中心のオーダーに切り替えた。打線が奮起せず、投手陣も総崩れ。大量リードを許す苦しい展開に、アニキが一撃でカツを入れた。引退する選手とは思えない力強いスイングに指揮官もうなった。

 和田監督

 違うよな、確かに。力もそうだけど、技術的なものもね。見て学ぶものがあの1打席に集約されている。引退を発表してからの打席は、内容もあるし、結果も伴っていて生きた手本。最後の1打席まで見逃さないようにしてほしい。

 若虎たちよ、金本を見よ-。1打席を、1球を、目に焼き付けることが、猛虎の未来を背負う若武者たちの財産となる。残り7試合。金本の背中から学ぶことは山ほどある。指揮官は若虎へ奮起を求めた。

 鉄人は試合に出る度、記録を塗り替えてゆく。通算塁打数は4478となり、衣笠(広島)を抜いて単独5位に浮上。通算出場試合数も門田(ダイエー)に並ぶ歴代8位の2571試合とした。そして、通算打点は歴代7位の長嶋(巨人)にあと1と迫る1521打点。ミスターに肩を並べ、超える時は目前だ。

 金本

 おう、知ってる知ってる。それは超えられたらラッキーかな。

 クラブハウスへとつながる通路。阪神ファンもヤクルトファンも関係ない。球場全体から歓声のシャワーを浴びた金本は帽子を取って左手を高く掲げた。何度も手を振り、柔和な笑顔で声援に応えた。東北福祉大時代には日本一に歓喜し、プロではガムシャラに汗を流した東都の聖地への感謝でもあった。

 金本

 (神宮で)あと2試合あるから、最後をかみしめる。

 現役でのプレーはあと7試合。鉄人はラストゲームまで歩みを止めない。【岡本亜貴子】

 ▼金本が11年9月15日中日戦以来、通算10本目の代打本塁打。44歳5カ月で代打本塁打は、80年6月15日野村(西武)の44歳11カ月、80年4月26日野村の44歳9カ月に次ぐ3番目の年長記録で、セ・リーグでは昨年自身がマークした43歳5カ月の年長記録を更新した。金本は代打本塁打10本のうち10年3本、11年1本、12年1本と40代で5本。40歳以上で代打本塁打を5本は若松(ヤクルト)大島(日本ハム)の4本を抜いて最多。