<国際強化試合:日本3-1キューバ>◇18日◇札幌ドーム

 若侍がけん引した。0-0の8回、先頭の代打、堂林翔太内野手(21=広島)が中越え三塁打で出塁し、坂本勇人内野手(23=巨人)の犠飛で先制した。さらに糸井嘉男外野手(31=日本ハム)の右翼線三塁打から相手暴投で2点目。若手中心のメンバーでキューバに連勝し、本番へ手応えをつかんだ。

 「赤い稲妻」に風穴をあけたのは、赤ヘルの若きスラッガーだった。互いの継投が決まり、無得点のまま迎えた8回。堂林が代打に送られた。足が震えた。山本監督から「思い切っていけ!」と背中を押してもらった。「打てる球は1球。1球を絶対逃さない。フルスイングを貫く」と覚悟を決めた。ヒメネスの初球。好物の外寄り140キロが来た。

 21歳は成長の足を止めない。シーズン中よりやや体の近くに構えた白木のバットを射抜いた。秋のキャンプで特訓し、立浪打撃コーチからもお墨付きを得た新フォーム。「捕られるかと思った」打球は失速せず、中堅の頭を越えた。三塁に到達してかしわ手を4度。重い空気を変えてみせた。

 堂林を本塁に迎え入れたのは、2歳上の3番坂本だった。代わったガルシアに2球で追い込まれても、大好きな日本ハムのチャンステーマが耳に入るほど冷静だった。単調に攻めてきた3球目、150キロの直球を逃すはずもなかった。外角に逆らわず右翼深くへ。「シーズンでやってきたことを、と思っていました」と言った。日本一の巨人ですり込まれてきた「つなぐ意識」が先制点を生んだ。

 直後、スモールベースボールが一転した。「人生で初めて」4番に入った糸井が、自分の庭である札幌ドームを箱庭に見せるスケールを披露した。2死無走者から、1人で2点目をもぎ取った。

 負けられないキューバが、イエラを送る。糸井が勝負球の外角スライダーを引っ張り込む。「あこがれの新庄さんと同じ。本当にうれしい」と興奮していた背番号1が、大きすぎるストライドで駆ける。高代コーチのストップに「暴走かな」と思いつつも構わず、三塁に突っ込んだ。「キューバの身体能力は素晴らしい」とあこがれを隠さない男が、相手のお株を奪う脚力を見せつけ、相手暴投で生還した。

 フルスイング。つなぎ。身体能力。日本の「今」がぎっしり詰まった攻撃でライバルを沈めた。「堂林は彼らしい積極的な姿勢が出ていた。糸井の三塁打が大きい。足は、あらためて大事だな、と」。山本監督にも若侍たちが頼もしく映った。【宮下敬至】