WBC日本代表候補に選出されているソフトバンク内川聖一外野手(30)が、侍ジャパンの3番打者に名乗りを上げた。12日、福岡・豊前市内で山ごもり自主トレを開始。チームで不動の3番は、来年3月のWBC本大会でも「個人的には3番を打ちたい」。現時点で侍ジャパン3番が有力視される巨人坂本に“挑戦状”をたたきつけた。

 2大会連続でWBC出場が確実視される内川が、侍ジャパンの3番に立候補だ。「チームの編成上、コントロールできない部分もある」と前置きしながら、横浜時代からの“固定席”へのこだわりを語った。前回大会は主に6番を打ったが、「自分の中では3番を打ちたい。3番でいちばん多く試合に出ているし、リズムが合う。初回に必ず打席が回ってくるし、やりやすい」と言い切った。

 侍ジャパンの11月キューバ戦は2試合とも巨人坂本が3番に指名された。現段階で有力候補と言える。それでも内川には日本人の右打者で落合、中島に続く3人目の5年連続打率3割を打った実績がある。「そこ(3番)を打たしてもいいと思われる存在でいたい」と、山本浩二監督に猛アピール。そのための備えを、例年より早めた。

 「大会が近づくにつれて自然と気持ちは入ってくる。体の準備だけは遅らせないようにしたい」。WBC3連覇という伝説達成へ、伝説にまつわる場所で自主トレを開始した。個人契約を結ぶ尾関幸一郎トレーナーを伴い、向かったのは豊前市。カラスてんぐの伝説が伝えられる求菩提(くぼて)山のふもとを、懸命に走り込んだ。「こりゃキツイ!」と息を切らせ、湧き水を飲んでのどを潤した。求菩提山はかつて修験の聖地とされた霊験あらたかな場所。内川も4日間の短期キャンプで、修行僧さながらに体を鍛え抜く。

 侍の3番打者に意欲を示しても、レギュラーが確約されてないことは分かっている。「もちろん競争と思っている。自分が何で勝負するかと言えば、打つしかない。足や守備ではかなわないから」。野手最年少だった09年WBCと違い、今度はリーダー格として引っ張る立場。意欲を語る顔からは、その自覚がにじみ出ていた。【大池和幸】

 ◆求菩提山(くぼてさん)

 福岡・豊前市の南にある標高782メートルの円すい形の山。古くから山岳信仰の山、修験(しゅげん)場だった。山伏たちの住居跡や護摩たき場の跡が残り、01年に国の史跡に指定された。山頂の国玉神社まで続く850段の石段は「鬼のあぶみ」と呼ばれ、山中を荒らし回っていた鬼が求菩提権現との約束により、一夜で築いたという伝説がある。