年俸アップも、笑顔はなかった。日本ハム斎藤佑樹投手(24)が17日、札幌市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、500万円増の年俸3500万円で一発サイン。2年目の今季は5勝8敗、防御率3・98と昨年を下回った。夏場に2軍落ちするなど、後半戦は失速。球団から「エース格にはい上がれ」と奮起を促され、笑顔は一切見られなかった。(金額は推定)

 約30分間の契約更改交渉を終えた斎藤は、硬い表情で会見場に現れた。「サインをさせていただきました。アップです」。新人から2年連続での昇給にも、笑顔を見せず、神妙な表情のままだった。交渉の席では球団からの提示額を見て、「(金額は)あまり、考えていませんでした」と、すぐに判を押した。

 胸中は複雑だった。「いろいろと悩むこともありましたし、最初の方はすごくうれしいこともありましたし…それも含めて今年はいろいろな経験をさせてもらいました」と、紆余(うよ)曲折の1年を振り返った。不調で2軍落ちを経験し、浮上のきっかけをつかめないままシーズンが終了。球団から評価された点を問われても、「僕の中では、後半ができていない…」と反省が口をついて出た。昨季を下回る成績をふがいなく思っているからこそ、素直に昇給を喜べなかった。

 後味の悪いまま2年目を終えたが、「開幕ダッシュに貢献したということでした」と言うように、球団からは序盤の活躍を評価された。今季は初の開幕投手に指名され、プロ初完投勝利をマーク。チーム4年ぶりとなる開幕戦勝利をもたらして、スタートダッシュの火付け役となった。

 さらに、好印象を与えたのは、あまり目立たない数字だった。交渉役の島田球団代表は「登板試合数やイニング数も去年とだいたい同じ」と査定ポイントを説明。昨年と同じ19試合に登板し、投球イニング数も昨年の107に比べて104とほぼ同数。勝利数、防御率は昨年を下回ったが、先発投手としての貢献度は昨年と同様と評価された。ただ、同代表は「もっと(年俸を)もらっている選手なら上がらない」と、3000万円の選手としての評価であるということも付け加えた。

 球団から、近い将来にエース襲名を厳命された。「今後、チームが勝っていくためには、彼がエース格にはい上がってこないといけない」(同代表)。斎藤にも、期待度は伝わっている。「来年以降、斎藤佑樹の成績とファイターズの成績は比例してくると言ってもらえたので、それが一番心に残りました」。悔しい1年に区切りを付け、さらに表情を引き締めた。【木下大輔】