DeNA荒波翔外野手(27)が、1歩成長するため、1歩減らす決意を固めた。キャンプ4日目の4日、全体練習を終えると1人で股関節のストレッチに励んだ。オフから下半身の強化にも取り組むが、狙いは二盗する際の歩数を12歩から、11歩に減らすことにある。そのためには1歩あたり約18センチ歩幅を伸ばす必要があり、このわずかな長さに執念を燃やしている。

 「現状に満足したら終わり。少しの違いと思われるかもしれないけど、成長したいですからね」。昨年はリーグ2位の24盗塁をマークしたが、シーズン後半から成功率が大幅に下がった。そのため疲労を最低限に抑え、なおスピードアップを図るために考え出した。「これまでの100の力を80にしても同じタイムが出せるようになると思う」。ただ、荒波自身が「これが正解か分からない」と言うように、リスクもある。84年に盗塁王となった高木チーフコーチ兼打撃コーチは「歩幅を大きくすると、足の回転数が下がるからトップスピードに乗りづらい面もある。スライディングの速度にも影響が出るかもしれない」と、意見は違う。それでも、荒波の試みを止めるつもりはない。「1歩減らすのはすごく大変。そこに取り組むのは大したもの。楽しみだね」。難題への挑戦を評価した。

 6日には05年世界陸上400メートル障害銅メダリストの為末大氏(34)が、練習視察に訪れる。荒波はこれもチャンスだと考えている。「野球とは違った視点で見てもらえると思う。いろんな話を聞きたい」。たかが1歩、されど1歩。わずか18センチへのこだわりが、盗塁王への大きな1歩になるかもしれない。【佐竹実】