<ヤクルト3-9阪神>◇29日◇神宮

 まいったかデスラー総統、じゃなくて小川ヤクルトよ。新生阪神の2番打者は、初開幕スタメンの大和内野手(25)だ。西岡、福留、コンラッド…。ずらっと新顔が並んだ13年型打線の中で、キラリと光る生え抜き戦士。波動砲連発の4安打で、6回2死一、三塁からしぶとく三塁手を越えた一打は、大勝の中でも価値あるV打だった。

 大和の笑顔がくしゃくしゃに崩れた。白い歯をカクテル光線に反射させ、珍しく右手を突き上げた。

 大和

 思わず出てしまいました。同点にされた直後で、なんとしても1点が欲しかったので。

 3点差を追いつかれた直後の6回だ。2死一、三塁。ヤクルト平井の内角直球に詰まりながら、強引に振りぬいた。ハーフライナーが三塁頭上を越え、遊撃森岡のグラブもはじく。勝ち越し打で重苦しいムードを一変させた。

 大和

 初めての経験に緊張したけど、ツヨシさんが緊張をほぐしてくれた。

 初の開幕スタメン。試合前セレモニーで三塁ベンチ前に並んだ際、隣の西岡から「緊張してんのか?

 いつも通りやれよ」と声をかけられた。あの時と同じだった。今春、実戦で犠打失敗が相次いだ。責任を背負い込んでいた時、1、2番コンビを組む西岡の言葉に救われたという。「考え過ぎだって。もしおまえがバントやエンドランに失敗したら、オレが走る。絶対セーフになるから心配すんな。それなら同じ1死二塁やろ?」。苦悩する姿を見かねての言葉。「あの一言でどれだけ楽になったか…」。いたずらっぽい笑顔は脳裏に焼きついたままだ。

 鹿児島・大隅半島出身の同郷、福留もヒントをくれた。暇があれば食事に誘ってくれる大先輩。2番打者のイメージにとらわれ、右打ちに苦心していた春先、心を楽にしてくれた。「引っ張るのが得意なら、引っ張ればいいんだよ」。1回に西岡が中前打。2番打者は犠打に失敗後、投前内野安打でつないだ。適時打は左前に引っ張った。「想像もしていなかった。出来すぎです」。2人の言葉に導かれ、プロ8年目で初の4安打だ。

 開幕スタメンを目前に控えた3月下旬、ポロっと本音をこぼした。「今、野球が楽しくて楽しくて、仕方がないんです」。厳しくも温かい先輩にも恵まれ、25歳の若虎が一皮むけようとしている。「結果が出なくなったらすぐに代えられる」。厳しい立場は自覚している。それでも強烈なプレッシャーを笑顔に変えられるだけの強さが、今の大和にはある。【佐井陽介】