<阪神4-3中日>◇2日◇京セラドーム大阪

 なじみの顔が、なじみの青いユニホームをまとっていた。それでも阪神福留孝介外野手(35)は顔色ひとつ変えずにプレーした。古巣へのあいさつ代わりに力を誇示してみせた。

 1点を追う4回無死二、三塁。初対戦のブラッドリーに、フルカウントから変化球に食らいついた。詰まりながら中前に落とした。これがチームにとって23イニングぶりの得点。冷静に、重い空気を振り払った。

 「トリと良太でつくってくれた場面。何とかしないといけないと思った。犠飛でも内野ゴロでもいいやと思っていった」

 適時打の後、1死満塁から藤井彰が右翼へ打ち上げた。打球は浅い。中日藤井は強肩。それでも三塁を蹴った。谷繁の守るベースへスパイクをこじ入れた。相手の中継ミスもあったが、気迫の勝ち越しスライディングだった。

 6回には四球で出塁すると、マートンの右中間への打球に一気に加速した。二塁をまわり、三塁を蹴った。最後は顔をしかめながら、また勝ち越しホームに滑り込んだ。

 「もうちょっと楽に返してほしいよね…」

 激走の35歳が苦笑い。打って走って、また走って。充実感がにじんだ。何より古巣との初対戦に勝ったという事実がある。

 「1つの相手チームだとしか思っていない。特別なことは相手も思っていないし、僕も思っていないよ」

 約20年前、福留少年は鹿児島から宮崎へプロ野球のキャンプを見に行った。巨人キャンプは人が多くて近づけなかった。中日の串間に行くと、球団スタッフが声をかけてくれた。

 「坊や、いつも来ているな。これ、持っていきな」

 初めてもらったボールが後の中日入りを決定づけた。そのスタッフも今はもういない。時間は流れ、自分も、球団も変わった。人生は前に進むべきもの。虎の福留が竜の前で躍動した。【鈴木忠平】