<広島6-7阪神>◇5日◇マツダスタジアム
いや~、福留サン、しびれましたわ~。負ければ単独最下位に転落していた広島戦は延長12回の死闘。5時間1分の激闘にケリをつけたのは、今季から阪神に加入した福留孝介外野手(35)の一打。日本球界6年ぶりとなる「虎1号」を放ち、連敗脱出だ。和田阪神初めての5点差逆転勝ち。さあ、ここから反撃や!
激闘にピリオドを打った。延長12回、福留は江草に追い込まれていた。2-2からの5球目。狙いは1つ、ストレート。白球にありったけの気持ちをぶつけた。歓声と悲鳴の中、打球は右中間スタンドに飛び込んだ。着弾を見届けると、感情をあらわにしてほえた。自分も、久保も、チームも。全てを救う1打だった。
「それまでの打席、凡退してね…。同じやられ方していたから絶対に打ってやろうと思っていた。悪い時はああだ、こうだ考えても仕方ない。気持ちだけ」
9回で終わるはずだった試合、スタメン野手で唯一、ヒットがなかったのが福留だった。5打席すべてでストレートを打ち損じていた。ところが守護神が追いつかれ、6打席目がまわってくることになった。延長戦を必死で投げ抜く、久保の後ろ姿を福留は外野から見ていた。だからこそ、最後の打席で絶対に打つ必要があった。
「久保も粘って投げていた。(点を)取られたくて、取られたわけじゃないし、責任を感じて投げていた。僕らも何とかして点を取りたかった。ここで久保が勝つのと、勝たないのとでは大違いだから」
5年間のアメリカ暮らし。最後は3A、マイナーで終えた。そこで福留はある種の「飢え」を持ち帰ってきた。ナイター終了後、バスで5時間揺られた。次の遠征地へ着くと朝になっていた。車中、腰痛持ちのベテラン選手が通路にシートを敷いて寝転がった。その上を若い選手がまたいでいった。決して美味とは言えない球場での食事も少しでも遅れていけば、跡形もなくなっていた。ただ、福留を刺激したのはそんな劣悪な環境面ではなかった。
「ある程度、年を重ねて、マイナーの雰囲気に慣れたら、もう這い上がれないんじゃないかと思う。上(メジャー)に呼ばれるのが面倒くさいなってヤツもいる。こんなところにいちゃいけないって思った」
メジャーと3Aを行ったり、来たりする選手の中には完全に上昇志向を失った選手もいたという。福留が飢えたのは勝利を目指し、向上する心だった。
「何でもいいから勝てて良かった。明日が大事。きょうは終わったことなんで。また、しっかり準備してグラウンドに出てきたい」
失敗もあった。だが、5点差を逆転したように、最後は全員で取り返した。その充実感が次の戦いへと向かわせる。もっと勝ちたい。福留は野球に、そして、勝利に飢えている。【鈴木忠平】



