<広島6-7阪神>◇5日◇マツダスタジアム

 阪神のノーアーチの呪いを解いたのは、キャプテン鳥谷敬内野手(31)だ。9回に先頭で左中間へ、チームにとっても初アーチとなる今季1号ソロを運んだ。WBCの大舞台を経験した男はやっぱり違う。頼れるリーダーに当たりが戻り、低迷していた打線も復調気配だ。

 不名誉な記録の継続を、キャプテン鳥谷が一振りでかき消した。開幕7戦目、12球団で最も遅かったチーム1号がようやく生まれた。鮮やかなアーチが、待ちわびる虎党の元に飛び込んだ。この日初めてのリードを奪い、スタンドの黄色が狂喜乱舞した。

 同点の9回無死。代わったばかりの広島守護神・ミコライオの6球目、直球を振り抜いた。「速い球になんとかついていけました」。打球は左中間に伸び、そのままスタンドイン。一時勝ち越しとなる、値千金の1発だ。WBCでその名をとどろかせた阪神チームキャプテンは、ここぞで真価を発揮した。

 チームは前日まで、6戦ノーアーチ。48年以来65年ぶりの緊急事態に陥っていた。屈辱の記録をストップさせたのは、主砲新井良でもなく、助っ人マートン、コンラッドでもない。胸にCマークの光る鳥谷だった。

 阪神の野手で唯一、侍の肩書を背負って戦った。2次ラウンド初戦の台湾戦では1点ビハインドの9回2死で二盗を決め中日井端の起死回生の同点打を呼び込んだ。続くオランダ戦では1番に抜てき。初回先頭打者アーチを放ち打線爆発の起爆剤となった。勝負どころで結果を残し日本中の野球ファンに「鳥谷あり」を印象づけた。

 打席では現在、今季から使用している赤いプロテクターを右足に装備しているが、WBCでは侍仕様の紺色のものを用いた。帰国後のオープン戦でも、数試合使用していたもの。3月24日のオリックス戦(京セラドーム大阪)では、“プロ初打席”に立ったドラ1右腕・藤浪も着用した。帰国した際に「合流して、いろいろなことを若い選手に伝えていけたら」と話していた鳥谷。ルーキーにも、世界を相手に味わった死闘の残り香を「おすそわけ」した。

 長く、深かった呪縛はキャプテンの一振りによって解かれた。開幕戦で17安打9得点と爆発した猛虎打線の復活も、すぐそこにあるはずだ。【山本大地】