<広島1-8巨人>◇19日◇マツダスタジアム

 死んだふり作戦か。巨人坂本勇人内野手(24)が逆転満塁本塁打を放った。前夜は発熱のため早退するほど体調を崩していたが、一晩にして復活。0-1の3回に満塁弾で試合をひっくり返すなど、今季初の4安打を放つ獅子奮迅の働きを見せた。戦略的休養日となった阿部慎之助捕手(34)も8回に代打で登場して3ラン。巨人の選手たちのコンディショニングを保つ巧みさが表れた。

 広島の夜空に大きな放物線を描いた。坂本の放った打球。広島の左翼手ルイスは、早々に追うのをやめた。一気に試合をひっくり返す満塁本塁打。「つなごうと思ったんですが、たまたまです。得点圏で打ててなかったけど、いい形で出てくれて良かった」。ゆっくりとダイヤモンドを1周すると、いつものように原監督とグータッチ。直後、ヘルメットをポカンとたたかれ、手荒い祝福を受けた。

 前日の状況からは考えられない1発だった。18日の阪神6回戦(東京ドーム)の試合前、坂本は発熱を訴えた。体温計は38度を超える数字を示していた。大事をとって7回の守備からはベンチに退き、注射を打って帰宅した。この日は広島に移動しての試合だったが、体調次第では欠場の可能性もあった。首脳陣はもしものために中井を1軍に上げ、備えていた。

 だが、広島に向かう飛行機の搭乗口に坂本は定刻どおり現れた。原監督から「朝飯はちゃんと食べられたか」と聞かれ「はい」と、しっかりとした口調で答えた。休む気はまったくなかった。原監督も「なんで熱が上がったのか。知恵熱ではないでしょうけど。でもまあ、回復力の強い選手。今日もしっかりいい仕事をしてくれましたね」と褒めた。

 坂本が驚異の回復を成し遂げた背景には2つのことがある。1つは今年からサプリメントを服用し、体調管理を気にかけていること。ビタミンCや関節の動きにいいとされる錠剤などを摂取。そのことが回復を早めてくれた。もう1つは、チーム方針として選手のコンディショニングを大事にしていることだ。前日、ベンチに下がった際には、発熱は治まりつつあったという。だが、早退させることで、わずかだが休養の時間を与えた。坂本は、その時間を睡眠にあて、回復に努めることができた。

 阿部にも休養を与え、スタメンから外した。ホールトンが長いイニングを投げ、中継ぎ陣のほとんどを休ませることもできた。原監督はコンディショニングについて「プロとして最低限の仕事だと思いますね」という。監督が考えるのはチーム全体のコンディショニング。この日の坂本の働きは、それがうまくいっていることの証し。連敗しない巨人の強さを支えている。【竹内智信】

 ▼坂本が逆転満塁本塁打を含む4安打。坂本の満塁アーチは昨年9月18日中日戦以来5本目となり、10年からは4年連続でマーク。連続シーズン満塁本塁打は94~99年駒田(横浜)95~00年イチロー(オリックス)の6年が最長だが、巨人で4年続けて打ったのは坂本が初めてだ。プロ野球最多で通算15本の王、チーム2位で通算9本の阿部も連続では3年止まりだった(他に巨人では3人が3年連続)。坂本が満塁で打席に立ったのは3日DeNA戦の5回に次いで今季2度目だが、前回は走者一掃の3点二塁打。2度の満塁機で7打点を挙げている。