<日本ハム2-7西武>◇19日◇札幌ドーム
西武のエース道-。渡辺久信監督(47)から示された教えを、岸孝之投手(28)は守った。7回、1点を奪われ、なお1死二塁。9番西川に四球を与え、ピンチが広がった。リードは2点。汗をぬぐってボールを受け取ると落ち着いて1番陽岱鋼を左飛、2番大引を三振に仕留めた。その姿を、渡辺監督はベンチでうなずきながら見守った。
常勝軍団のエースだった男が、エースへと歩を進める岸に求めたのは、自力で道を切り開くことだった。
渡辺監督
誰も助けてはくれないから。自分で乗り越えていかないと。
現役時代の経験則からの言葉だった。岸の姿に重ね合わせたのは90年6月16日のダイエー戦。自身の黒星から始まって、チームが8連敗を喫して迎えた一戦だった。試合前、投手コーチに「今日は最後まで僕が行きます。監督にも伝えてください」と伝えたという。自ら招いた負の連鎖は自分で止める。それが、渡辺監督が描くエース道だ。
その思いを体現したのは、1点リードの5回無死一塁でのバント処理だった。チャージをかけて迷わず二塁に送球。野選となって無死一、二塁となったが、クールな男が珍しく“強引”なプレーを見せた。渡辺監督は「普通の岸なら、一塁に投げていると思う。次の1点をやらないという気持ち、勝利に対する執念が出た」と称賛した。
3連敗中の岸に「オレなんか、8連敗したことがあるんだよ。3連敗なんて大したことない」と声を掛けた渡辺監督は「いつもの岸と違うように見えた。自分で勝ちを取りにいった」と成長を認めた。試合後、岸はポツリと言った。「監督が言うように、自分で抑えてこそかな、と思った」。初勝利の陰には、黄金時代のエースから現在のエースへと受け継がれたエース道があった。【久保賢吾】
◆1990年(平2)6月16日、西武-ダイエー13回戦(西武)VTR
西武がサヨナラで連敗を8で止めた。3-3で迎えた延長10回。秋山が5年ぶりの送りバントを決めると、5番デストラーデが13号サヨナラ3ランを放った。先発の渡辺久は148球で10安打完投。中盤以降は左足を20センチ高く上げ、球威を増して12奪三振。ハーラー単独トップの7勝目を挙げた。8連敗は6月3日に野茂(近鉄)と投げ合った渡辺久が完投負けしてから始まっており「エースというより男の意地です」と声を詰まらせた。



