<広島0-2巨人>◇20日◇マツダスタジアム

 雨にも負けず…どころか、あっさり勝った。巨人ドラフト1位菅野智之投手(23)が、広島戦に先発し、6回を内野安打1本の無失点投球で3勝目をマークした。雨が降り続く悪条件の中、新人離れしたマウンドさばきで完璧に封じ込めた。この好投でチームは2連勝で今季最多の貯金11。強すぎる巨人の独走状態は止まりそうもない。

 降りしきる雨も関係なかった。菅野がぬかるんだマウンドでも快投し続けた。指先から離れていくボールは、水を切りながら広島打線に襲い掛かった。天候不良のため試合開始時間が15分遅れる中、「立ち上がりを意識しました」と、1回から全開モード。先頭ルイス、菊池、丸を3者凡退で片付けて波に乗った。

 驚くべき適応能力を発揮した。「初回に踏み出した足が滑ったので半足、縮めた」とすぐさまフォームを微調整した。グラウンドコンディションはマウンドだけではない。マツダスタジアムは赤土と天然芝のため、イレギュラーバウンドしやすい。味方の守備も配慮して「絶対にゴロを打たせないようにしようと思いました」。相手打線のデータを元に「ハイボールヒッターが多い」と分析し、高めの球を有効に使った。6回まで18個のアウトのうち、ゴロを打たれたのは2失策と自らのグラブをはじいた内野安打を除けば2本だけ。計算通りの投球で悪条件を攻略した。

 プロで勝つための心得を体現した。2月のキャンプ中に2年連続最多勝投手の内海から「勝てる投手か、そうでないかは少しの差でしかない。危機察知能力が大事な要素」と、アドバイスされた。試合開始から雨が降り続いた上に、気温10度を下回る寒さという、厳しい条件がそろった。そんな危機を察知し、危なげない投球で文句なしの仕事をした。

 むろん現状維持で満足する器ではない。3月30日の前回対戦で2安打された広島丸へのリベンジにも成功した。6回無死で迎えた打席では内角直球で2ナッシングと追い込むと「前回の対戦で使っていなかったので」と、ボールゾーンからの外角スライダーで見逃し三振を奪った。課題とする左打者対策として「外スラ」を使いこなし、成長の痕跡を残した。

 抜群すぎる安定感でデビュー戦から4戦負けなしでリーグトップタイの3勝目をマークした。計31奪三振も堂々のリーグトップ。次回登板予定の27日ヤクルト戦次第では、新人では98年の広島小林幹英以来の、4月の月間MVPも現実味を帯びてくる。技術もさることながら「マウンドに上がった以上は相手に弱みは見せたくないし、味方が不安がるようなそぶりは見せちゃいけない」と、言えるほどの精神力と賢さが新人離れしている。強すぎる巨人の歯車の中、菅野の存在が、ひときわデカくなってきた。【為田聡史】

 ▼菅野がリーグトップに並ぶ3勝目。巨人の新人で無傷の3連勝以上は07年金刃(4連勝)以来になる。巨人はまだ19試合目。2リーグ制後、開幕から19試合目までに3勝した巨人の新人は57年藤田、60年青木、60年堀本、00年高橋尚、06年福田に次いで6人目。20勝の99年上原(3勝目は23試合目)や16勝の66年堀内(同40試合目)より早く3勝目を挙げた。被打率と防御率を前半5回までと6回以降に分けて出すと、イニング

 被打率

  防御率1~5回

 .116

 0・456回以降

 .200

 5・00

 他の巨人先発投手は5回までに合計25失点あるが、菅野の5回までの失点はデビューの広島戦で4回に記録した1点だけ。序盤に崩れない菅野には安心して試合を任せられる。