<阪神1-0ヤクルト>◇20日◇甲子園

 延長12回の死闘翌日は、速攻劇や!

 初回1死一塁で、頼れる阪神キャプテンの鳥谷敬内野手(31)が打った。ヤクルト石川から右翼線へ先制の適時二塁打。スミ1勝利の貴重な1点をもぎとった。前夜は5打数0安打だったが、イヤなイメージを引きずらないのが、この男だ。

 鳥谷は冷静に状況を分析し、バッターボックスの黒土をならした。相手先発はヤクルトの大黒柱、石川。前日19日に延長12回サヨナラ勝ちした雰囲気を、そのまま持ち込みたかった。

 鳥谷

 小嶋が今年初先発する。なんとか先に点を取ってと、チームとしても考えていた。昨日の勝ちもあったし、先に点を取って、主導権を握りたかった。

 初回1死一塁、3ボール1ストライク。真ん中スライダーを見逃さない。右翼線にライナーを弾ませ、先制二塁打で一塁走者大和を悠々生還させた。前夜の流れを継続させ、前回3月30日は8回2/3無失点に仕留められた石川に先制パンチ。虎をスミ1勝利に導いた。

 3月上旬、WBC1次ラウンド最中のヤフオクドーム。鳥谷はベンチ裏で必死に記憶をたどっていた。早大時代、日米大学野球の休日にチームメートとメジャー観戦へ出かけた。ただ、訪れた球場すべてを思い出せない。「確かドジャースタジアムとヤンキースタジアムは行ったけど…」。

 そこに偶然、大学時代も代表で同僚だった2歳下の松田が通りかかった。後輩から「オリオールズの球場も行きましたよ!

 木製ベンチにビックリしたじゃないですか」と苦笑いで指摘され、「全然、覚えてない」と照れ笑い。もちろん日々の反省は忘れないが、過去にしがみつきはしない。

 当然、WBCに対してもスタイルは変わらない。阪神で使うバッグにはWBCネームプレートが付いたままだが「ただ、外してないだけ」。思い出はいったん封印。余韻や感慨は「ぜんっぜん、ない!」と言う。そんな男だから前日ヤクルト戦で5打数無安打に終わっても、「昨日は昨日。今日はピッチャーも違う。場面場面でやれることをやる」と冷静に結果を残せる。

 試合前のティー打撃では少年時代に立っていた右打席に入り、心と体に刺激を投入。6回2死一塁からは技あり左前打を決め、マルチ安打を記録した。

 鳥谷

 (初回は)大和がよくかえってくれた。小嶋はリズムがよくて守りやすかった。ノーヒットノーランをやってほしかったですね。1勝できたので、これからも頑張ってほしい。

 お立ち台では後輩をたたえ、控えめにグラウンドを後にした。チームは3連勝。ただ、鳥谷はその余韻に浸ることなく、今度は和田阪神初の4連勝に照準を合わせるだけなのだろう。【佐井陽介】