松井秀喜氏(38)が、巨人ナインへ初の訓示をたれる。5日広島戦(東京ドーム)の前、長嶋茂雄氏(77)と松井氏に対する国民栄誉賞の表彰式が行われる。当日は慌ただしいスケジュールが予想されるが、両氏をベンチ裏で行われるミーティングに招き、訓示してもらう予定という。長嶋氏はキャンプなど節目にナインの前で話をしているが、松井氏は初めてのこと。現役時代は言葉より行動で示すタイプだったが、将来、指導者の道に進むとなれば言葉の力は重要になる。“ゴジラの金言”も注目される。

 松井氏の言葉を胸に、巨人が記念日の必勝を期す。5日の表彰式、引退セレモニーの詳細が固まり、当日のチケットは完売が確実となった。盛り上がりを「お祝いの日ですね」と歓迎した原監督は、試合前ミーティングの訓示を、長嶋、松井両氏に託すことを明かした。「そういう(訓示の)時間を設けていただいた、と聞いています。長嶋さんは、シーズン中も折に触れて話していただくことがある。でも松井は、初めてなんじゃないかな。楽しみですね」と穏やかに話した。

 巨人でプレーした10年間、松井氏は常に中心でチームを引っ張ってきた。01年から2年間は選手会長も務めた。ただ松井氏は、言葉よりも野球への取り組みを示すことで好影響を与えるタイプ。仲間の前で直接メッセージを送る場面はなかった。海を渡った02年オフ以来となる、慣れ親しんだ東京ドーム一塁側サロンで、選手たちを鼓舞してゲームに送り出す。

 単なる訓示、ではない。これから続いていく松井氏の野球人生にとっても、節目の言葉となる。現時点で去就は未定だが、遠くない将来に指導者として古巣に復帰する可能性は十分ある。現役時代、長嶋監督、原監督の言葉からエネルギーをもらい、結果を残してきた。今度は逆の立場となり、選手たちを言葉で引っ張っていく時を迎える日はそう遠くない。ファンへのあいさつやメディア対応とは意味が違う。これこそ現役を離れた「野球人・松井」としての大きな初仕事となる。

 今、巨人の中心には主将の阿部がいる。特にチームが苦しい時、力強い言葉で強い巨人を率いている。高橋由が故障のためファーム調整中で、長嶋、松井両氏とともに戦った1軍選手は、ただ1人しかいない。阿部は「ジャイアンツの偉大な先輩の前で、試合ができる喜びがある。同時に、一層、気が引き締まる。気負うことなく、普段どおりの野球を見せることで、成長した姿を見ていただきたい」と意気込んだ。巨人軍にとって晴れの日に、舞台裏では脈々と伝統が引き継がれていく。<松井の訓示&あいさつ>

 ◆V奪回宣言

 97年秋季キャンプを打ち上げる際、ファンにマイクで「来年ここに来るときは、必ずチャンピオンフラッグを持って帰ってきます」と優勝を誓った。

 ◆自覚

 00年のキャンプイン前日ミーティングで、「チームの中心として引っ張っていきたい」とリーダーの自覚を示す。

 ◆就任

 01年1月、21世紀初の巨人選手会長として「初めてのことなので、先輩方の意見を聞いて、これから頑張っていきたいと思います」と就任あいさつ。

 ◆音頭

 同2月、「シーズンでも目いっぱいプレーできるよう頑張っていきましょう!」と打ち上げの音頭を取った。

 ◆後輩にゲキ

 05年1月、正月の帰省中に母校・星稜を訪問。8年ぶりのセンバツ出場が濃厚な後輩たちに、「久しぶりの甲子園ですから、日本一を目指して大暴れしてきてください」とゲキを飛ばし、「僕は世界一になれるよう頑張る」と誓った。