<国民栄誉賞表彰式>◇5日◇東京ドーム

 巨人が最大限の礼を尽くして松井秀喜氏(38)をコーチに迎える。巨人の長嶋茂雄終身名誉監督(77)と、巨人、ヤンキースなどで活躍した松井氏の国民栄誉賞表彰式が5日、東京ドームで行われた。巨人渡辺恒雄会長(86)は松井氏の父昌雄氏を通じて、将来的な監督就任を要請したことを明かした。さらに、近日中に直接会う機会を設けており、そこで再度、入閣を依頼する。球団としては松井氏の合意さえあれば、今季中からでも臨時コーチとして契約できるよう準備していることも分かった。

 巨人渡辺会長が、ついに松井氏の入閣に向けて動きだした。報道陣からの、松井氏に入閣の話をしたのか?

 という質問に「今日はしない。近く会う。お父さんにはお願いしておいた」と話した。かねて温めていたプラン。コーチとして勉強した後に、監督に就任してもらうという球団側の希望を父昌雄氏に伝えたようだ。

 渡辺会長の頭にあるのは、来季のことではない。可能ならば、今季中からでも一緒に戦ってほしいという願いがある。松井氏には臨時コーチとして、シーズン中の1カ月間だけでもチームに合流してほしいということを打診中とみられる。シーズンをまっとうするのではなく、短期間にすることで、依頼を受けやすくなるよう配慮している。

 ある球団幹部は「難しいとは思うけど、シーズン中であってもやってくれるのならば、こんなうれしいことはない」と、今季中の松井臨時コーチ実現を歓迎した。それは、球団の総意でもあり、別の幹部も「少なくとも来季、入閣をお願いするのは間違いない」と、松井氏のコーチ就任を熱望した。

 その背景には盤石の原政権から、スムーズな移行を目指すためにも、1年を有効に使いたい考えがある。渡辺会長は以前、「彼はバッターだから、投手の交代とかは勉強しなければならない」と話しており、いきなりの監督就任要請は否定。原監督の下で帝王学を学んでほしい意向だが、今季中に臨時コーチとしてでも実績を積むことができれば、来季からでも監督就任を依頼することが可能だからだ。

 その実現には、松井氏の意思が重要になるが「また皆さんの前に戻って来たいという気持ちはあります。野球から離れることはない。何か恩返ししたいという気持ちもある」と期待を抱かせる言葉を残した。さらに、また気持ちがムクムクしてくるのでは?

 という問いかけに「そうならなくてはいけない。頑張ります」と決意を持ってこたえてもいる。

 球場を引き揚げる渡辺会長は上機嫌だった。セレモニーについて「完璧だったな」とひと言。長嶋氏への気遣い。決しておごらない態度。巨人の将来を託すに足ると判断した人材の振る舞いに目を細めた。あとは、直接、熱意と誠意を持って依頼するだけ。ファンの夢「松井監督」実現に向けて老体にむちを打つ。