<阪神5-7ヤクルト>◇5日◇甲子園

 主砲が意地のひと振りを見舞った。阪神新井貴浩内野手(36)が敗色が濃くなった試合展開に波乱を起こした。3点を追う7回だ。それまで打ちあぐねていたヤクルト先発八木が突如、乱れる。連続四球で無死一、二塁。2球目の甘い直球を逃さない。思い切り強振すると、打球はライナーでバックスクリーンに一直線。スラッガーらしく、ド迫力の今季2号3ランで同点に追いついた。

 「(スイングは)悪くはない。狙ってはいない。積極的に行こうと思った。投手にいつも助けてもらっている試合が多いからね」

 試合終盤は猛打の応酬でシーソーゲームになった。追いついた直後の8回に福原がつかまり、2点差になったが、その裏に弟の良太が同点2ランを放つ。兄もネクストサークルで拳を突き上げてエキサイト。それでも、9回に久保が崩れ、昨年8月12日広島戦(京セラドーム大阪)以来、3度目の兄弟アベック本塁打は実らない。「こういう日もある。また明日…」と話し、クラブハウスに消えた。

 こどもの日に父としての威厳を保った。この日は裕美子夫人が2人の愛息を連れて甲子園で観戦。もっともパパが奮い立つシチュエーションで格好良すぎる一撃を披露した。昨年から2年連続で5月5日にオーバーフェンス。勝てなくても必死に白球を追う姿は、息子だけでなく、多くの少年少女へのメッセージだ。

 2回には2死後に出塁し、機敏な動きで今季初盗塁の二盗を決めた。すべては藤浪を鼓舞するためだ。黄金ルーキーの先発日に今季2発を放っており、通算14打数7安打、打率5割と大当たり。「晋太郎が頑張って粘り強く投げていたし、結果がホームランになって良かったです」。藤浪が投げれば“用心棒”の新井兄が打ちまくる構図ができつつある。負けてなお、猛虎打線の底力を示したデーゲームだった。【酒井俊作】

 ▼新井貴浩、良太の兄弟が、12年8月12日広島戦以来3度目のアベック本塁打。貴浩は通算264号、良太は15号で合わせて279本塁打となり、兄弟本塁打数で大豊・大順兄弟を超え単独3位となった。

 ▼新井兄弟は今季、藤浪先発の試合で好成績。(選手名、打率、本塁打、打点の順)貴浩

 .500

 2本

 6点良太

 .462

 1本

 4点

 貴浩の今季2本塁打はいずれも藤浪の先発試合。兄弟合わせて27打数13安打で打率4割8分1厘、3本塁打、10打点の猛打で黄金ルーキーを援護している。