<西武5-10阪神>◇19日◇西武ドーム

 阪神が息を吹き返した。過去5戦5敗の「天敵」西武涌井を攻略し、6年ぶりの交流戦2ケタ得点をマークした。キャプテン鳥谷敬内野手(31)が4回に逆転打を放つなど10得点の猛攻をけん引。交流戦は3連敗スタートを喫したが、打線が活発化しての連勝。勢いを取り戻してきた。

 クールな表情の裏で、きっと燃えていたはずだ。逆転劇の主役は鳥谷だった。殊勲の一打を放って二塁ベース上に到達すると、地元・埼玉のファンから歓声が降り注ぐ。今季打点を挙げた試合はこれで9戦全勝。勝利を呼ぶ男の一撃が試合を決めた。

 鳥谷

 四球のあとの初球だったんで、狙ってました。ストライクゾーンに絶対投げてくるんで、タイミングが合えば行こうと思っていた。

 3点を追う4回だった。西武の先発涌井が乱れ、四球や失策で満塁。さらに西岡に押し出し四球を与え降板。代わった坂元も大和に押し出し四球で、ついに1点差となった。なおも無死満塁。ここで打つのが千両役者・鳥谷だ。初球を迷いなく一閃(いっせん)。打球は右翼線に転がり、一気に逆転となる2点タイムリー。ふらふらと不安定な飛行を見せていた西武投手陣に、とどめの追撃を見舞った。

 過去5度の対戦で5敗を喫していた天敵・涌井を討ち、初めて土をつけた。本調子でなかったことは鳥谷の目にも見えていた。「自分の打席の中でどう、ということはなかったですけど、ちょっと荒れてましたね」。前日のソフトバンク摂津に続く、エース級の撃破にも「ピッチャーどうこうというより、チームが勝つことが大事なので」と冷静さは忘れていなかった。

 交流戦で訪れる西武ドームでは、05年から毎年欠かさずヒットを放っている。幼き日の鳥谷少年もよく訪れた球場。「来てた来てた。その頃はドームじゃなかったけどね」。早大の人間科学部がある所沢キャンパス屋上からは、ドームの屋根が見えた。いつも近くにあった「故郷」が、おのずと力を生み出した。父敏さんと母明美さんがスタンドから見守っていた。敏さんは「いい試合でしたね。西武ドームではよく打ってくれます」と目を細めた。毎年このカードは鳥谷が両親を招待。母の日と父の日がある交流戦の時期に、欠かさない親孝行の儀式だ。

 和田政権になってからは交流戦初の2ケタ得点。キャプテン鳥谷を軸に、交流戦初の連勝と阪神が強さを取り戻した。