<阪神4-3ロッテ>◇9日◇甲子園

 甲子園は藤浪のためにあるのか-。また負けなかった。阪神ルーキー藤浪晋太郎投手(19)が自身ワースト12被安打、最多118球の6回途中3失点で降板。それでもチームは逆転サヨナラ勝ちし、黒星が消えた。大阪桐蔭時代から甲子園登板は15試合不敗。パワースポットの聖地が藤浪の成長を支えている。

 またまたまた、負けなかった。勝利が決した瞬間、藤浪はベンチを飛びだし笑顔を爆発させた。「マートンさまさまです。打った瞬間に入ったと思いました。1発を信じていたので、うれしかったです」。大阪桐蔭時代から続く甲子園無敗記録は、神懸かり的に途切れなかった。それでも歓喜の輪が解けると、冷静に自分を振り返った。

 「ほぼ負けのようなピッチングでしたし、なんとか負けがつかずにいけたのも野手の方のおかげです。負けない、ではなくて、勝てるようになっていきたい」

 初回3者凡退の最高の立ち上がりから、2回以降は毎回走者を背負った。粘りの投球を見せるも5回までで球数は95を数えた。続投した6回は先頭からの3連打で満塁。大阪桐蔭の2年先輩にあたる江村は併殺に打ち取るも、2死二、三塁から代打サブローに勝ち越し打を許した。プロ最多118球目をはじき返され「ピンチで粘りきることができませんでした」と6回途中降板を悔いた。

 酸いも甘いも経験する日々。スーパー19歳の楽しみの1つがおやつの時間だ。遠征先で登板のない日の練習後、宿舎近くのコンビニへ足を運び、袋いっぱいのお菓子を購入する。スナック菓子にチョコレート。晋ちゃんの趣向は多岐にわたる。幼い頃からそうだった。母明美さんが、弟滉二郎さんの分と合わせ2つずつ買ってくるおやつはいつも晋太郎少年の分だけ先になくなった。大阪桐蔭時代のお気に入りはチョコレート菓子の「ブラックサンダー」。明美さんが寮を訪れる際には必ず差し入れした。ロッテのコアラのマーチも好物のひとつだったが、この日初めて対峙(たいじ)したロッテ打線をねじ伏せることはできなかった。

 成長も、課題も見えた。中西投手コーチが「配球を変える」と話していた左打者対策。外からストライクに入るカットボール、インコースの直球をうまく使い、1巡目は左打者5人から4三振を奪った。一方、球数が多くなったところは自らも反省する。「最初からムダなボールが多かった。三振を狙うよりも、打ち取る方法を覚えないと」。打たれただけでは終わらない。発展途上のルーキーがまた強く、たくましくなる。【山本大地】