やっぱりボールは変わっていた!

 日本野球機構(NPB)と労組日本プロ野球選手会(会長=楽天嶋基宏)の事務折衝が11日、仙台市内のホテルで行われた。選手会側から導入3年目となる統一球が「昨年より明らかに飛んでいる」との指摘を受けたNPB側は、事情を説明。昨年までが「飛ばなすぎるボール」であったことを明かし、微調整を加えていた事実を認めた。

 NPBがようやく隠し続けてきた真実を公表した。この日の事務折衝で選手会側が統一球について「昨年と違うボールなのではないか」と、問いただした。何らかの変化があったことは今季の個人成績表を見れば一目瞭然で、嶋会長は「明らかに本塁打数も3割打者も増えている。逆に投手の防御率は悪くなっている」と、事情説明を求めた。これに対し、NPB下田事務局長は、過去5年間の反発係数のデータを示して、今季から微調整を加えた新たなボールを使用している事実を明らかにした。

 プロ野球で使用されるボールの反発係数には規格値が定められている。従来より飛距離が1メートル落ちる「飛ばないボール」として開発された統一球は下限(0・4134)に近づけて製造され、11年シーズンから導入された。ところが、NPBがシーズン中に行う検査で、昨年は下限を下回る数値を示していたことが分かった。抜き打ちで複数の球場から選んだボールの反発係数の平均値が「0・408」だったこともあったという。つまり“飛ばない”ではなく“飛ばなすぎる”ボールであったことが判明したのだ。

 ある専門機関の調査では1メートルどころか3メートルも飛距離が落ちるとの結果が出たことから、昨年夏、NPBはボールに微調整を加えることを決め、ミズノ社に修正を要請した。昨季の使用球の在庫は今季のオープン戦までに使い切り、今年の開幕から新しいボールを使用。今年の2度(4月と6月)の抜き打ち検査の平均値は「0・415~0・416」を示しているという。下田事務局長は「加藤コミッショナーにも相談して進めた」と話した。

 NPBはこれまで「統一球の仕様は変更していない」と説明。ミズノ社に対し、統一球に関する問い合わせに「全く変わっていない」と答えるように指示していた。変更を公表しなかった理由について、下田事務局長は「我々はあくまで微調整という認識だった。知らせれば混乱を招くと思ったが、知らせないことで混乱を招くと言われれば、そういうこともあるかもしれない」と釈明した。思わぬ形で再燃した統一球問題。今後の行方が注目される。

 ◆統一球

 12球団でバラバラだった公式使用球のメーカーをミズノ社に統一し、11年開幕から導入。コルク芯を覆うゴム材も新たな配合に変え、両リーグアグリーメントに定められている反発係数(0・4374~0・4134)も規格値の下限に近づけた。導入時の発表では、144キロの速球をバットのスイングスピード126キロで打ち返し、飛び出し角度が最も打球の飛ぶ27度と仮定した場合、従来のボールは110・4メートル飛んだが、統一球は109・4メートルと試算されていた。また手触りは、背中部分だけでなく、キメの粗い脇や腹の部分の牛革も使うことで、大リーグや国際野球連盟(IBAF)の試合球に感触を近づけている。

 ◆統一球の検査

 検査日の試合前に審判員が未使用球を抽出し、署名を入れて郵送。NPB事務局または野球規則員が指定した場所で、野球規則委員または審判員が立ち会い、重量、周囲の測定や、日本車輌検査協会の反発係数測定器で測定を行う。NPBでは11年にミズノ社製の統一球を導入以来、約2カ月に1度、6球場から12球ずつ集めて反発力をテストしてきた。

 ◆本塁打が急増

 今季の1試合平均本塁打は1・50本で、統一球導入1年目の11年(1・09本)2年目の12年(1・02本)と比べても大幅に回復している。満塁本塁打は11年21本、12年25本に対し、今季は前半戦の途中で23本も飛び出した。ブランコ(DeNA)は年間57発ペースとなる23本を放ち、昨季11本の井口(ロッテ)は早くも13本で量産ぶりを見せている。