統一球を秘密裏に飛びやすく変更していた問題で、日本野球機構(NPB)は14日、公式戦使用球の検査結果を公表した。検査は東京都内の日本車両検査協会で行われ、1度の検査で6球場から1ダースずつ抽出した計6ダース(72球)が調べられた。11、12年は「飛ばなすぎるボール」が使われ、今年は「飛びやすいボール」になっていたことが裏付けられた。

 実際の数値を目の当たりにして驚いた。NPBが過去5年間の公式戦使用球の反発係数を初めて公開した。NPBだけが抱えていた極秘のもので、12球団の代表者にも初めて渡された。これによると、統一球導入後の2年間、計8度の検査(再検査含む)が行われ、そのすべての平均値が基準値の下限(0・4134)を下回るものだった。公式戦で「飛ばなすぎるボール」を使い続けてきた事実が、はっきりと裏付けられた。

 一方、今季の2度の検査結果(4月と6月)は、明らかに「飛びやすいボール」に変わったことを示している。いずれも「0・416」で基準値内に戻っている。過去2年間、どの球場でも、はじき出されなかった高い数値である。これを見て「ボールが飛ぶようになった」と感じない人間などいないと思う。データの報告を受けていたはずの加藤コミッショナーが「疑問に思ったことはない」と言うのは、どう考えてもおかしい。

 球団や選手にも非公表にしてきた極秘情報。どれほど厳重に管理されているのかと思ったら、NPB内では特に制限された情報ではないという。加藤コミッショナーや下田事務局長だけではなく、NPBの職員であれば簡単に手にできたわけだ。昨年まで一部の球場では基準値どころか公差(許容範囲の誤差)を下回る“違反球”が使用されてきたことを「組織ぐるみで隠してきた」と批判されても文句は言えまい。ましてや、そんなNPBの「統一球の変更をまったく知らなかった」という一方的な言い分を、うのみにできるはずなどない。下田事務局長の独断で行われたかどうかは、第三者機関で徹底的に調査されるべきだろう。

 ただ、過去のスポーツ界の第三者委員会を振り返ると、実態解明には程遠い結果しか残せなかったケースが多かった。NPBの今回の決定が、騒動を沈静化させるための「ガス抜き」や「時間稼ぎ」が目的ではないことを祈るしかない。今後、委員会をどういう形で設立するのか、メンバーは誰にするのか。この過程について厳しく目を光らせておく必要がある。【広瀬雷太】

 ◆統一球

 12球団でバラバラだった公式戦使用球のメーカーをミズノに統一し、11年から導入。コルク芯を覆うゴム材の配合を変え、両リーグアグリーメントにある反発係数(0・4374~0・4134)も規格値の下限に近づけた。打球の飛距離が約1メートル減る試算だった。MLBに倣い、ボールには日本で初めて「加藤良三」とコミッショナーの名前を直筆サインをもとに印刷した。