<楽天3-0阪神>◇16日◇Kスタ宮城

 マー君の貫禄勝ちだった。楽天田中将大投手(24)が交流戦最終戦となった阪神戦で今季初完封勝利を飾り、開幕からの連勝を9に伸ばした。藤浪との甲子園V腕対決を制し、球団史上最多の交流戦貯金6をもたらした。リーグでは2位に再浮上。負けないエースは、21日に再開するレギュラーシーズンでもフル回転で悲願の初優勝へ突き進む。

 田中の表情が、明らかに変わった。2回だ。先頭から3連打を浴びた。ポテンヒットに、バント処理の連係ミス(内野安打)が続いた。不運な形で無死満塁の大ピンチ。マウンドで、みるみる鬼の形相になった。ここで「1点もやるつもりはなかった」と、スイッチが切り替わった。

 リスクをいとわなかった。荒木に初球からスプリットを2つ続けた。ワンバウンドで暴投なら先制点を与えていたが「キャッチャーを信じて、腕を振って投げるだけ」と精度良く落とし続けた。ともに振らせ、最後もスプリットで空振り三振に斬り捨てた。続く大和は一直に封じ、西岡は、外角いっぱい、この日最速154キロで詰まらせた。

 走者を三塁に置いても、宝刀スプリットを投げきれる。だから、満塁でも打たれない。8回も2死から全ての塁が埋まったが、マートンをスプリットで遊ゴロ。タイミングを外し、ボテボテに仕留めた。今季は満塁で12打数無安打。「満塁で1点OKという気持ちは持ちたくない。0に抑えようと思う。それが良い方向にいっている」と力を込めて答えた。強い心と、洗練された技が、土俵際の粘りを支える。5回1死三塁でフォークが高めに浮き、KOされた藤浪とは対照的だった。

 登板2日前、藤浪への意識を問われ否定した。この日の登板後も「別になかった」。ただ、藤浪の1回の投球(3者凡退)を「変化球が低めに決まっている。先に点を与えると苦しくなる」と冷静に受け止めただけ。結果、スコアボードに0を並べた。格の違いを見せつけたが、悔しさも残る。優勝を狙うと宣言した交流戦は2位に終わった。「悔しさをぶつけて、シーズンが終わった時に良い思いをしたい」と、再びのV宣言で締めた。【古川真弥】

 ▼田中が今季初完封で開幕9連勝。楽天でシーズン9連勝は08年岩隈の8連勝(2度)を抜く球団新記録となり、開幕9連勝は09年川井(中日=11連勝)以来だ。完封はプロ1年目の07年から7年連続で17度目。プロ入り7年連続完封勝ちは、05~11年ダルビッシュ(日本ハム)以来になる。田中は通算84勝目だが、球場別の勝敗を出すと

 球

 場

 

 勝-敗

 (勝率)

 K宮城

 50-17(746)

 その他

 34-18(654)

 これでKスタ宮城では通算50勝目。50年から使われている同球場で50勝したのは田中が初。

 ▼田中は駒大苫小牧で05年夏に優勝し、藤浪は大阪桐蔭で12年に春夏連覇。田中が甲子園優勝投手と先発対決は近藤(オリックス)西村(巨人)斎藤(日本ハム)に次いで4人、7度目。結果は6勝0敗で、「甲子園V腕対決」はまだ負けていない。