<楽天5-0日本ハム>◇9日◇東京ドーム

 マー君が鉄腕を超えた。楽天田中将大投手(24)が日本ハム打線を散発4安打に抑え、今季2度目の完封勝利を挙げた。開幕からの連勝を12に伸ばすとともに、連続無失点イニングを40とした。西鉄稲尾の39イニングを上回り、パ・リーグ歴代4位にランクイン。負けないエースで前半戦最後の9連戦の頭を取った。3連勝で、2位ロッテとのゲーム差を2・5に広げた。楽天が首位をひた走る。

 田中は1人でゴールまで駆け抜けた。9回2死走者なし。日本ハム中田を初球、内角146キロで遊ゴロに仕留めた。「シャッ!!」。4安打完封ショー。ピンチらしいピンチはなかったが、ゲームセットの瞬間だけ大きくエンジンをふかしてひとほえした。チームメートとハイタッチすると、静かにキーを抜いた。

 スタートから、ぶっちぎった。3回2死まで1人の安打の走者も出さなかった。序盤の援護に「楽に投げられました」と感謝したが、安全運転も忘れない。狭い東京ドーム。「コース、コースにしっかり」と慎重にアクセルを踏み、得点圏に走者を抱えたのは2度だけだった。3回2死三塁のピンチでは、陽をスライダーで遊ゴロ。5回2死二塁では中島を直球で左飛。変化球、直球と自在なハンドルさばきで快適な“無失点ドライブ”を続け、重ねた0は40イニングに達した。

 前半戦を締めくくる9連戦の初戦は、1年に1度の東京ドームでの主催試合だった。球団史上最多4万3683人の観客が見守る中、お立ち台では「ファンの方々に楽しんでいただければ」と、いつもの人懐っこい笑顔を見せた。稲尾超えの記録については「マウンドに上がれば意識しません」と照れたが、ベンチ裏では「いつも0に抑えるために投げている」と、エースの信念をのぞかせた。

 思うように調整できているからこそ「0」を続けられる。昨年は腰痛や脇腹痛の離脱もあり、思うようにコンディションを維持出来なかった。だが、今年は登板翌日はランニングとウエート。2日目に休み、3日目から登板前日にかけて短距離走と、基本メニューを変えずに調整出来ている。

 トレーニング担当の星コーチはF1カーにたとえた。昨季は「タイヤごと替えなければいけなかったが、今季はタイヤはそのままでOK。登板後の状態を見て、空気圧を調整するだけ」と説明した。いわば、両輪を結ぶ車軸が安定しているから、周辺の微調整でこと足りる。夏場に入ったが食欲は落ちず、体重の増減も2キロ内に抑えられている。コンディションが沈まないことが、安定したパフォーマンスにつながっている。

 年に1度の「楽天グループデー」を最高の形で締めた。「ジャイアンツの阿部さんの言葉を借りて…、最高です!!」と、大声援に応えた。栄光のチェッカーフラッグへ、球界のF1が突っ走る。【古川真弥】

 ▼田中が今季2度目の完封で開幕から12連勝、6月9日巨人戦から40イニング連続無失点をマークした。連続無失点のプロ野球記録は58年金田(国鉄)の64回1/3だが、パ・リーグでは58年稲尾(西鉄)の39イニングを抜いて4位となった(セで40イニング以上は延べ9人)。昨年8月26日日本ハム戦からは16連勝。開幕12連勝以上は05年斉藤(ソフトバンク)以来で9人目、通算16連勝は同じ斉藤が03年に記録して以来で、こちらも9人目の快挙だ。05年斉藤は開幕12連勝した8月9日時点の防御率が2・54に対し、田中の防御率は1・24。開幕12連勝時にこんなに防御率が良いのは、0・72だった66年堀内(巨人)以来になる。<パ・リーグのシーズン連続イニング無失点5傑>(1)杉浦忠(南海)54回2/3

 59年(2)ダルビッシュ有(日本ハム)46回

 11年(3)杉浦忠(南海)43回

 59年(4)田中将大(楽天)40回

 13年(5)稲尾和久(西鉄)39回

 58年(5)田中勉(西鉄)39回

 63年