<楽天5-0日本ハム>◇9日◇東京ドーム

 マー君、打てん!

 日本ハムは楽天田中に散発4安打に抑え込まれ、今季7度目の完封負けを喫した。これで対田中は11年9月10日から9連敗となり、栗山政権下ではいまだ白星なし。チームは5位に転落し、勝率5割に逆戻りになった。打者として田中と2度目の対決になったルーキー大谷翔平投手(19)は、初死球に四球と2度出塁し、2度のレーザービームを披露するなど奮闘した。

 日本ハムには、少し残酷な敗者の行進になった。東京ドームに隣接するホテルに同宿の楽天ナインとは違い、もちろん足取りは重い。中田、陽岱鋼らは両耳にヘッドホンを装着。報道陣に敗戦の弁を求められるのをけん制するかのように、帰路に就いていった。マー君に今季4戦全敗。記録的な個人の連勝を献上した。栗山監督は「ここまでやられればね…」と、完敗をかみしめた。

 緊迫感漂った試合前、天敵の攻略へ向けた野手ミーティング。厚沢チーフスコアラーは、シンプルな指令を出していた。「田中が牙をむいてきたら、背を向ける」。ピンチで力を発揮するのが、田中の特性と分析。そこで真っ向から勝負するのではなく、冷静に数少ない好球を待つという厳守事項を言い渡していた。そして、機動力の駆使。栗山監督は「普通にやっても難しい」と腹を決めていた。

 展開が、描いた青写真を許さなかった。序盤3回までに4点ビハインド。お家芸の小技を絡められず、抵抗したのはまだ2点差の3回だけだった。無死から死球で出塁した大谷が一塁走者でエンドランを仕掛け、鶴岡が空振りで盗塁死。2死から中島が投前安打で出塁して二盗を決めたが、1点が遠かった。栗山監督が「動き回っていくしかない」と狙い通りのタクトがふるえたのは、ここだけだった。

 個人の力に頼り、散発4安打で完封負け。陽岱鋼は「いつもより落ち着いていた。グイグイこられた」と脱帽した。勝率5割へと逆戻りし、再び5位に転落。稲葉は「一昨日(7日)の夜から何とかやっつけないと考えていたんだけれどね」と執念実らず、ため息をついた。11年からの連敗は「9」に伸び、ついに節目にリーチがかかった。トラウマが、重みを増してきた。【高山通史】