<オールスターゲーム:全セ3-1全パ>◇第2戦◇20日◇神宮

 全セをけん引したベテラン谷繁元信捕手(42)が、球宴の大舞台で粋な演出だ。阪神藤浪が初出場の球宴でとんでもないパフォーマンスをみせたが、その裏には中日谷繁の好アシストがあった。藤浪は全セ4番手で6回に登板。大阪桐蔭の先輩、全パの4番日本ハム中田に頭上を越える山なりスローボールを投じた。2球続くと中田がマウンドに詰め寄る即興コント。これに谷繁が一役買っていた。さすが千両役者だ。

 谷繁のいたずらセンサーが、お祭り舞台で作動した。6回2死で迎えた藤浪-中田の大阪桐蔭対決。初球の超スローボールに続いて、2球目も山なりでみんなが驚いた。だがそのサインを出した人物こそ、25年目のベテラン捕手だった。「1球目は大阪桐蔭チームで考えてたみたい。でも1球じゃつまらないと思ってね」。42歳はしてやったり。少年のような笑顔だ。

 初球は藤浪と中田の大阪桐蔭の先輩、阪神西岡の仕業だった。でもまさか2球目があるなんて。フィクサー西岡すらびっくり大爆笑だったが、二重の仕掛けができるのも遊び心満載の谷繁ならでは、だ。サインも準備していた?

 「藤浪も目で分かったみたい。でも中田は知らなかったでしょ」。怒って?

 バットを投げ、藤浪に向かう中田を制止に行く演技も決めてスタンドを沸かせた。

 もちろん本業でも魅せた。捕手では球宴史上最高齢の42歳フル出場で1失点継投を演出。セの勝利を導いた。「42歳、コキ使われるなあ」とクタクタだったが菅野、小川、石山、藤浪の新人を好リード。特に「僕も最後のオールスターになるかもしれないし、受けてみたい。持ち味を引き出せれば」と楽しみにしていた藤浪との初バッテリーには大興奮だった。

 「体が大きい割に腕が遅れて出てきて球の出どころが独特。何百人と受けてきたけど、見たことも受けたことがないタイプ」

 本人は新人を絶賛も、ルーキーを軸にしたリレーでの快勝は、マスクをかぶったのが谷繁だからこそ。一方でリードのよさを熟知する自軍の高木監督は「1本ぐらいヒットを打ってくれんとな」と4タコをボヤいたのは笑えるが、硬軟で存在感を示した。

 「受けて感じがわかるのはいいことだからね」。菅野や小川、まだ対戦のない藤浪らの研究もちゃっかり完了したか。再び敵として戦う後半へ、強烈な刺激をもらったことは間違いない。守道竜の大逆襲も、背中で引っ張る。【松井清員】

 ▼中日谷繁が「9番・捕手」でフル出場。42歳6カ月でのフル出場は、96年第1戦での42歳7カ月の巨人落合博満(4番・DH)に次ぎ、史上2番目。捕手では最年長となった。