“エースの素質”が試される。6連敗中と低迷している日本ハムの危機を救うべく、投打二刀流ルーキーの大谷翔平投手(19)が今日30日ロッテ戦(QVC)で、後半戦、初めてのマウンドに上がる。ここまで5試合に先発し、負けなしの2勝。今月19日のオールスター第1戦(札幌ドーム)で、プロ入り後、自己最速タイとなる157キロを記録した無敗の右腕が、連敗ストップに臨む。

 屋根を激しくたたく雨音を、打ち消すようなキャッチャーミットの音が、室内練習場に響き渡った。球宴後、初めての登板を翌日に控えた29日、日本ハムの投打二刀流ルーキー大谷が、休日返上で2軍施設のある千葉・鎌ケ谷のブルペンに立った。カーブやスライダーなど変化球を織り交ぜて30球。カーブの軌道に「感覚は良くなかった。もっと縦に投げられたら」と不満をこぼしながらも「バランス良く投げられました」と、滴る汗を何度も拭った。

 近い将来、エースとして期待される右腕にとって、6度目のマウンドは意義深いものとなりそうだ。最下位脱出のため先発ローテーションの再編を検討中の首脳陣は、30日から始まる6連戦のスタートを、あえて伸び盛りのルーキーに託した。本来ならばエース級の投手の役目で、救援陣に極力負担をかけないためにも、長いイニングを投げることが求められている。日本ハムではメジャー移籍前のダルビッシュが、その役割を長年担ってきた。

 初めて経験するカード初戦の登板は、チームが連敗中という試練も重なった。19歳には荷が重いと思ったのか「まさか(連敗中という)こんな状況で翔平に回ってくるとは思わなかった」と頭を抱える栗山監督だが、連敗ストップもまた、エースの役目。将来を思えば、むしろ絶好の機会とも言える。「何でもいいから、勝てればいいし、そういう流れを作るような投球が出来たら」と、大谷本人は意欲満々だ。

 球宴第1戦では、DeNAのブランコや中村ら長距離砲にもひるまず、すべて直球で勝負した。栗山監督は「外角低めに直球で押し切れていた。それを、シーズン中も出せるのか。必死の1球を投げてくれれば、それでいい」と期待を寄せる。大谷は「球宴は1イニングだけだったので思い切り投げましたけど、先発だと…。最初から(全力で)いくかもしれないし、いかないかもしれないし。試しながら投げたいですね」と不敵に笑った。球宴後、打者としてのスタメン出場は5試合中2試合のみ。投手としての準備を優先してきた背番号11が、エースへの道を1歩踏み出す。【中島宙恵】