<巨人6-5ヤクルト>◇1日◇東京ドーム

 巨人の高橋由伸外野手(38)が「切り札」として劇的な一打を放った。同点で迎えた9回裏2死一、三塁から、2年ぶりの代打サヨナラ打で勝負を決めた。チームは開幕時以来の6連勝で、敗れた2位阪神とのゲーム差を7・5まで拡大。今日2日からは阪神との直接対決3連戦で、最短で明日3日のマジック43点灯を目指す。

 極限状態での一振りを任せられる代打は高橋由しかいなかった。5-5の9回裏2死一、三塁。4番阿部が敬遠で歩かされ、鈴木に代わって代打で登場した。東京ドーム内に充満するサヨナラムード。並の打者なら緊張感に縛られる。だが高橋由は先頭の長野が出塁した時点で、ベンチで心を整えていた。「いろんなケースを想定してた。橋本が送って勇人が打つか、慎之助(阿部)が歩かされて自分で勝負か」。満塁策も考えられる場面だったが「打つしかない。それ以外ない」と腹をくくった。

 覚悟の一振りはカウント1-1から生まれた。内角をえぐる141キロのカットボールを振り切る。中前へ緩やかに飛んだ打球に「何とか落ちてくれ」と願いが通じ、ダイブを試みた上田の前に弾んだ。クールな38歳が右拳を突き上げたのもつかの間。一塁側ベンチからの歓喜の塊にのみ込まれた。「ベタベタだよ」。ヒーローの白いユニホームはコーラまみれで茶色く変色していた。

 代打の難しさを何度も体験している。7月28日の中日戦、8回2死満塁。菅野が打席で2ボールとなり、原監督から代打で送り出された。完封ペースだった菅野を降板させ、勝敗を決する一打を放つことを求められた。だが強烈なピッチャー返しを山井が好捕。試合には勝ったが、勝負に負けた悔しさがにじみ出た。

 試合後に「難しい場面だったが?」と聞かれた第一声は「それより(母校の)桐蔭学園が負けて悔しいよ」だった。その日は神奈川県大会準決勝が行われ、勝てば翌日の決勝にオフの高橋由も観戦予定だった。母校の敗退も悔しかっただろうが、普段は誠実に一問一答に応じるベテランが代打で結果が出なかった悔しさを、包み隠すように関係ない話題で答えた。

 代打は奥深い。そして場面が困難を極めれば極めるほど、粋に感じる。「そういう場面で使われるのは、何とかしてくれるという期待だと感じている」。11年10月12日の阪神戦のサヨナラ3ラン以来となる2度目の代打サヨナラ打で、その醍醐味(だいごみ)をかみしめた。巨人の無双状態の強さを、切り札の一振りが象徴していた。【広重竜太郎】

 ▼巨人は代打高橋由の中前打で今季7度目のサヨナラ勝ち。高橋由のサヨナラ安打は、11年10月12日阪神戦で榎田から代打サヨナラ本塁打を打って以来、通算7本目。代打では前記阪神戦に次いで2本目だが、巨人で代打のサヨナラ安打を2本は、山本功が77年6月15日広島戦と79年4月22日ヤクルト戦で記録して以来、34年ぶりになる。阪神が中日に敗れ、両チームは7・5ゲーム差。巨人は今日からの阪神3連戦で2勝すればM点灯となり、最短では3日にM43が出る。