<DeNA6-12巨人>◇7日◇横浜

 今日こそ、今日こそ原巨人に優勝マジック点灯だ。お得意さまDeNAに、4点ビハインドも関係なしの逆転勝ち。同点の8回、長野久義外野手(28)が決勝13号2ラン。今日8日に勝つか引き分けて、阪神が負ければマジック40がともる。

 初めての感触だった。同点の8回。1死一塁で長野が打席に入った。グリップを軽く振ってタイミングを計る。DeNA大田の3球目は、ど真ん中に入ってきた133キロスライダー。珍しく右手をバットから離し、左手1本で振り抜いた。「こういうホームランは打ったことがないので、自分でも驚いています。もう1回、打てと言われてもできません」。ナチュラルドライブをかけた決勝2ランを横浜の夜空にぶち込んだ。

 2度と打てないと自負する会心の一撃。「まぐれです。たまたまです」と、ニヤリと白い歯をこぼしながらダイヤモンドを回った。今季の長野には、いつまでも「なかなか調子が上がらない」という言葉が亡霊のようにつきまとう。開幕前のWBCからの不振が抜けきれずにいる。むろん、本人も理解するところ。開幕直後は「始まったばかりですから」と話していたが、交流戦直前は「打率?

 ここまでくると、そう簡単には上がりませんからね…」と、表情をゆがませた時期もあった。

 周囲からのアドバイスも日に日に増える。首脳陣の技術指導には、謙虚に耳を傾ける一方で、心に留める信念がある。6月13日の交流戦、オリックス戦で5打数無安打に終わった夜だった。「最後はここですよ」。自分の心臓を指でさしながら強い口調で言った。喜怒哀楽をめったに表に出さない男の一言。この日の決勝弾は自らの不調へのピリオドを意味する一撃だとすれば、もう2度と打つ必要はない。

 前日の特訓も背中を押した。郡山での試合前。原監督に呼ばれて監督室に入った。約10分間、まずは口頭で打撃のレクチャーを受けた。そのまま、室内練習場に移動して、1時間にも及ぶ監督のマンツーマン指導が始まった。素振り、ティー打撃を繰り返し、内角球のさばき方を徹底的にたたき込まれた。練習後は「また、がんばります」と試合に臨み、前夜も3安打2打点で応えた。

 原監督も「さらに、さらにというところ。何か、いいきっかけになってくれれば」と手応えを強調した。3安打2打点で今季初の2戦連続の猛打賞。連覇へのマジック点灯が、すぐそこまで迫った真夏の夜。実りの秋へ向けて、長野がようやく復調を完了させた。【為田聡史】

 ▼巨人は0-4から逆転勝ち。今季の逆転勝ちは両リーグ最多の28度目だが、4点差以上をひっくり返したのは昨年9月18日中日戦(1-5→9-5)以来になる。今季の2ケタ得点は7度目で、そのうち4月3日10点、同24日17点、5月10日10点、7月5日12点、8月7日12点と、DeNA戦で5度(残り2度は交流戦)。他カードでは平均3・7点の巨人打線が、DeNA戦では平均7・5点を記録している。2位阪神も勝ったため、M点灯はお預け。今日の試合で巨人○か△、阪神●ならば巨人にM40が出る。