<巨人5-3阪神>◇28日◇東京ドーム

 4番のバットで優勝マジック24が再々点灯だ。巨人村田修一内野手(32)が1回、2試合連続となる先制の22号2ラン。同点の5回には決勝の右前適時打を放ち、2位阪神を7ゲーム差に引き離した。強力打線のど真ん中に座り、4試合続けて打点をマーク。FA移籍2年目の勝負どころで、底力を見せつけた。

 目深にかぶったヘルメットの奥で、村田が阪神榎田をにらみつけていた。「早い段階で点が取れれば攻略できる」。1回2死二塁、最初の打席が難敵を崩す潮目だと思った。2球目のスライダーを強振した直後の3球目だった。「追い込まれるまでは真っすぐを待つ」と決めていたから迷いはなかった。内角に食い込むクロスファイアに踏み込んで砕いた。2試合連続の22号2ランで、この大切な試合の「主導権を取れた」と確信した。

 眼光鋭いままだった。敬遠気味の四球を経た5回。1死二、三塁で打席に入ると阪神が動いた。剛球のボイヤーに代わった。「右投手。勝負してくる」。打席内でずっと、助っ人をにらみつけていた。気持ち短く持ったバットで、初球のアウトローを右前にさばき、1球で勝負を決めた。「簡単ではない球。結果球が、ファーストスイングで決まる。打ち損じが減った」と、マジック再点灯となる決勝打に満足した。

 にらんでいたのは、相手を威嚇するためではなかった。その行為に村田のこだわりが詰まっていた。ヘルメットのツバは一般的に、頭の形状に沿ってゆるやかにわん曲している。村田のヘルメットだけ、ツバが一直線になっている。

 村田

 ツバが曲がっていると、視界が曲がっているように見える。真っすぐなツバに視線を合わせることで、自分が真っすぐ立てていることを確認している。

 122メートル先の中堅フェンスに記されている広告の文字、ヘルメットのツバ、視線。この3つを真っすぐ合わせる。黒目の部分が上に上がるから、にらんでいるように見えた。豪快な“男”のイメージと裏腹の繊細な準備で目の錯覚を消し、真っすぐ相手と対し、勝負に勝った。

 4番に座って4試合、すべてで打点を稼いでいる。「この位置が重いと思ったら、野球はできない」と言った。4番村田で連覇する。【宮下敬至】