<広島5-4巨人>◇16日◇マツダスタジアム

 広島が今季初の6連勝で、悲願の大舞台をグッと引き寄せた。苦手だった巨人に3連戦3連勝し、クライマックスシリーズ(CS)進出のクリンチナンバーを10とした。継投や代打起用など野村謙二郎監督(46)の采配がズバズバと決まっての快勝。4位中日の自力CS進出が消え、いよいよ16年ぶりのAクラスが見えてきた。

 最後のドキドキシーンは、まだ出場していないCSへの壁だったかもしれない。広島が4点リードで9回を迎えたが、1つのミスで流れは急転した。無死一塁から、藤村の投ゴロをミコライオが二塁へ送球。併殺と思われたが、木村がボールをはじいた。ここから、連続四球や暴投などで3失点。2死二塁と一打同点まで追い込まれたが、なんとかロペスを見逃し三振。大きな勝利を、野村監督はこう振り返った。

 「いい教訓になりました。十何年Bクラスであることが証明された。野球の神様が、教訓にしなさいということだと思います」

 冷や汗をかかされたが、中盤は早めの継投策でしのぎ、代打指名した高卒新人・鈴木誠のプロ初安打が値千金の先制適時打。この日の先発の総年俸(推定)は、巨人の7億5330万円に対し3億2950万円の“格差”もどこ吹く風の3連勝。指揮官の采配がはまり、勢いに乗るチームが、さらに加速した。

 9月に大失速した昨年とは違う。昨季は15年間閉じ続ける扉を前に金縛りにあった。野村監督は「去年は得点どころか、最後は安打も出なくなったから」と振り返る。9月以降の29試合で、2ケタ安打はわずか3試合。1試合平均1・96得点の貧打で、自慢の投手陣にもプレッシャーがかかった。投手陣は口々に言う。「今年は打線が点を取ってくれる」。

 2人の存在感が絶大だ。1人はキラだ。途中加入し7月から1軍で戦う大砲は、すでに14発。この試合も8回1死二塁から、キラの右前打で長野の失策を誘い決勝点を奪った。さらに、エルドレッドの左前適時打で山口をノックアウト。2人が同時に中軸に座った試合は、6戦6勝と破壊力は抜群だ。チームも9月12試合目にして、昨季を上回る4度目の2ケタ安打。それどころか、9月以降の総得点も既に上回った。夏場に苦しい投手陣を打線がカバーする理想的な試合運びを続けて、白星を積み重ねている。

 今季初の6連勝で、CSまでのクリンチナンバーも10。91年を最後に12球団で最もリーグVから遠ざかり、CS未経験はDeNAと広島のみ。FAで中心選手流出が続き、Bクラスが定位置になってきたが、脱出の大チャンス到来だ。最後のAクラスだった97年を知る1人で、今季初勝利の横山は「弱いチームの一員より強いチームの一員でありたい」と前を向く。4位中日と今季最大の4・5ゲーム差。悲願達成に向け、いよいよカウントダウンが始まった。【鎌田真一郎】