“エース”流出阻止へ-。中日が今季FA権を取得した9年目中田賢一投手(31)に3年以上の複数年契約を準備していることが分かった。竜のエースナンバー20を背負う右腕は、金銭と人的補償の必要のないCランクとみられ、権利行使となれば複数球団との争奪戦が予想される。

 首脳陣はすでに動き始めていた。この日、今季国内FA権を取得した中田賢について井手球団代表は「うちにとっては必要な選手です。シーズン終わったら話をしたいと思っている」と説明。重要課題の1つとして位置づけており、流出阻止へ3年以上の複数年契約を提示するとみられる。ここ数年は「去る者追わず」のスタンスだった中日にとって、異例の大型条件とも言える。

 中田賢は他球団からも「お買い得」として見られている。チームごとに年俸により格付けしたランクでは、金銭と人的補償の必要のないCランクとみられる。今季推定年俸は7000万円と決して安くはないが、“高額所得者”が多い中日では、中田賢の格付けが相対的に下がる。今季のFA市場では注目の存在になのだ。

 中日が総力を挙げて引き留めるだけの実力もある。3年目の07年には自己最多の14勝を挙げるなど通算61勝。今季は主に中継ぎとして登板し、夏場には先発に復帰した。今年31歳を迎えたが練習量はチーム屈指。球威、スタミナの衰えは一切感じさせない。先発、中継ぎをこなす器用さも大きな魅力だ。球団は「投手王国」再建のための不可欠なピースとして考えている。

 中田賢の発言も気になる。8月のFA権取得時には「長くやってきたとは思う」とだけ話していたが、この日は慎重に言葉を選びながらも「いろんな可能性を考えていきたい。現時点で『絶対出ます』とか『絶対残ります』とは言えない」と含みを持たせた。もしFA宣言となれば、複数球団が手を挙げることは間違いない。エース吉見が来季開幕が微妙な状況で、中田賢がチームを去るとなれば一大事。背番号20を手放すわけにはいかない。【桝井聡】

 ◆中田賢一(なかた・けんいち)1982年(昭57)5月11日、北九州市生まれ。八幡高-北九州市立大を経て04年ドラフト2巡目で中日入団。中日のエース番号「20」を与えられた。05年4月15日阪神戦でプロ初勝利。07年には初の2桁となる14勝(8敗)を挙げた。今季は先発、中継ぎとして40試合に登板。4勝6敗、防御率3・40。今季推定年俸は7000万円。180センチ、78キロ。右投げ右打ち。