<セCSファイナルステージ:巨人3-1広島>◇第3戦◇18日◇東京ドーム

 昨季は故障でポストシーズンに登板できなかった巨人杉内俊哉投手(32)が7回2安打1失点で勝利投手になった。

 杉内がロックなBGMにのってCSの舞台に帰ってきた。プレーボール直前。球場内に昨年の登場曲、吉川晃司の「SPEED」が流れた。「初回は力みすぎて四球から1点取られた。また、このパターンかと思ったけど、味方が逆転してくれた勢いに乗れた」と、7回1失点の好投。曲名をなぞるかのような“スピード決着”で2年連続日本シリーズ進出を決めた。

 ちょうど1年前。流れるはずの登場曲は1度も本拠地に響かなかった。チームは日本一になったが、自身は左肩痛でポストシーズンは1試合も投げられなかった。片隅でごまかしながら調整を続けたが、キャッチボールも満足にできない状況。仲間がグラウンドで躍動する姿を「テレビで見て悔しい思いをした」。この日まで心のモヤモヤが晴れることはなかった。

 今季の開幕戦当日だった。東京ドームの通路で原監督と約束を交わした。「今年は1年間、最後まで一緒に戦おう」と、指揮官と男同士の約束。2年越しで使命を果たし「監督の期待に応えたいの一身だった。本当に良かった」と、胸をなでおろした杉内を、原監督も「今日は最高のピッチングをしてくれた」と、たたえた。

 思いの丈を込めたマウンド。今季の登場曲として使ったMANISHを昨季、流し続けた吉川晃司に変えた。「ポストシーズン限定。去年はこの時期に流せなかったから」と、登板前から温めてきたプランも、好投を後押しした。尻上がりに調子を上げるのも、9個も積み上げたフライアウトも、杉内本来のスタイル。昨季の“忘れ物”は1つしかない。「あと4つ勝って監督を胴上げしたい」。日本一連覇への戦いに、今季は最後まで杉内が加わる。【為田聡史】

 ▼杉内が巨人移籍後初のCS登板を白星で飾り、ソフトバンク時代の07年1S第2戦以来、6年ぶりCS通算2勝目(5敗)。09年から続く自身のCS連敗を3で止めた。プレーオフ、CSで、2球団で白星は豊田(西武、巨人)ホールトン(ソフトバンク、巨人)に次いで3人目だ。今シリーズの巨人投手陣の自責点は杉内の1点だけで、チーム防御率が0・33。過去にプレーオフ、CSでチーム防御率0点台は06年2S日本ハムの0・50しかなく、巨人の0・33は日本ハムを抜いて新記録となった。