覇権奪還に向け最強タッグを組む。巨人阿部慎之助捕手(34)が、年内に米ニューヨークへ渡り、来春キャンプで臨時コーチを務めるOBの松井秀喜氏(39=元ヤンキース)と会談することが4日、分かった。選手の代表である主将という立場から、チームの現状を伝える。外から古巣を見ている松井氏に率直な意見をもらい、万全の態勢で来季へのスタートを切る。楽天に奪われた日本一を取り戻すべく、主将とゴジラが早くも動きだす。

 失意にくれる暇などない。阿部が「最強・ジャイアンツ」の復権へ動きだす。「松井さんに会いに行きたい。メジャーに行く前に『このチームは慎之助のチームになる』って、言ってくれた恩人。松井さんが、アメリカにいる間に松井さんが、活躍した場所に行ってみたいと思っていた」と熱っぽく語った。米ニューヨークに松井氏を訪問することを決めた。

 日本シリーズ終了から一夜明け、仙台から帰京した。新幹線の車内では、楽天の歓喜を報じる新聞には一切、目を通さなかった。球史に残る死闘でまさかの不調に陥った。7試合で22打数2安打、打率9分1厘に沈んだ。球界屈指の強打者が「打率が1割以下って人生で初めて。こうなると、どうしても焦ってしまうし、どうしたらいいんだろう…」と悩んだ。近年のジャイアンツを常に、けん引してきた阿部が、どん底まで突き落とされた。

 40年ぶりの日本一連覇はかなわなかったが、松井氏の見立て通り、チームを象徴する選手に成長した。だが、一方で周囲からの助言は極端に減った。だからこそ「今の姿が正解かどうかというのも不安になるときがある」。巨人時代に不動の4番として君臨した先輩との会談は、阿部にとって願ってもない金言になるはずだ。

 新旧リーダー同士の対談となれば、当然、チームの話題にも及ぶ。松井氏が来春の宮崎キャンプで臨時コーチを務めることが決定。「僕が言うことじゃないかもしれないけど『お願いします』というのは選手の代表として伝えたい」と、キャプテンとして礼を尽くす。さらに「松井さんと一緒にプレーした選手は、もう数人しかいない。若い選手の特徴とかも伝えられれば、短い期間の中でもスムーズに指導してもらえると思う」と橋渡し役を買って出るつもりだ。

 最大の目的は巨人を強くすること。「先輩の力をお借りしてでもチームがもっと強くなれば」と願う。松井氏は、今年5月5日に行われた国民栄誉賞のセレモニーに出席のため帰国。8月にも一時帰国した。だが、多忙を極める先輩への配慮で2人で会うことはなかった。「僕から会いに行かせてもらうのが礼儀。その時間をとってくれただけでも、ありがたい」と話した。新旧4番がタッグを組んで日本一奪還へスタートを切る。

 ◆松井氏と阿部

 01年シーズンから2年間、ともにプレーした。阿部は駆け出しで、松井氏は不動の4番に君臨していた。同じ左打ちの強打者。阿部は「打球を見て衝撃を受けた。雲の上の存在」と尊敬している。リーグ連覇した今年9月、松井氏は「強い時のヤンキースにはジーター、ウィリアムス、ポサダ、リベラと、自然の振る舞いの中で周囲を引きつけていく存在がいた。今の巨人も慎之助(阿部)や内海が、自然とそういう姿勢を示しているのではないか」とコメント。阿部の成長を認めている。