巨人阿部慎之助捕手(34)が「生涯ジャイアンツ」を宣言した。22日、松本市内で行われたトークショーに出演。集まった約600人のファンを前に軽快なトークを展開した。来季で入団14年目を迎える“球界の顔”が、自身の将来を見据えるのと同時に、ポスティング制度を利用してメジャー挑戦を希望している楽天田中についても言及した。

 歯切れが良かった。阿部が、硬軟の話題をちりばめたトークショーでスパッと言い切った。「僕をここまでにしてくれたのもジャイアンツだし、すべてがジャイアンツだと思います。最後は、しがみついてでもジャイアンツでキャリアを全うしたい」。唐突に飛び出した「生涯ジャイアンツ宣言」に、集まった約600人のファンから歓声と拍手がわき起こった。

 今月上旬に米ニューヨークに渡り、巨人、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏(39)と対談した。「一番、印象に残っていることは『1年でも長くやれ』と、言っていただいたこと。いろいろな美学はあるけど、その言葉を聞いて、目指すべき方向性がはっきりした」と決意が固まった。ただ、プレーする場所は日米、数球団を渡り歩いた松井氏とは異なり、ジャイアンツしか頭にない。

 チームだけではなく、球界を背負う立場を自覚するだけに、他チームの案件についても複雑な心境を明かした。「マー君がメジャーでどれぐらいの成績を挙げるのかという楽しみな部分は当然ある。でも、いなくなって日本球界が寂しくなってしまわないかという不安や心配もある」。今季、レギュラーシーズン無敗で球界を盛り上げた楽天田中だけではなく、来オフには広島前田健もメジャー挑戦の意向を表明している。スター選手の流出に危機感を隠さずにはいられなかった。

 夢への挑戦を頭ごなしに否定しているわけではない。「ヤンキースのピンストライプに憧れを抱くように、ジャイアンツのユニホームを着続けたいと思ってもらえるチームにしないといけない」と、メジャーに劣らないチーム環境、価値を作り上げていくことが重要だと熱弁した。日本のプロ野球の魅力とは何か。今こそ、真剣に向き合うときだと阿部が訴えているようだった。【為田聡史】