トリよ、ホームランを打ちまくれ!

 阪神掛布雅之GM付育成&打撃コーディネーター(DC=58)が13日、宜野座キャンプに合流して初指導を行った。いきなり生え抜きの主力鳥谷敬内野手(32)に本塁打量産のコツを伝授。踏み出す右膝が内側に入ってしまう癖を指摘し、やや開き気味にするよう助言した。「鳥谷の阪神で勝て!」とゲキも飛ばした。掛布DC打法で鳥谷が長打力を増せば、9年ぶりV奪回は近づく。

 阪神の伝統を継承する光景そのものだった。昼下がりの宜野座ドーム。カーブマシンを打ち終えた鳥谷のもとへ、掛布DCが歩み寄る。「ちょっと今カネと話したんだけど…」。そう切り出し、OBの金本知憲氏も加わる。鳥谷が構えると掛布DCは踏み込む右膝の角度を指摘。金本氏は左膝を後方から引っ張る。3人の輪は15分以上も解けなかった。

 掛布DC

 (バットの)トップをつくるときに、左の軸足が内側に入ってしまう。両足の膝がなかに入るのが気になっていた。強い体を持っているし、パワーもカネに負けない体の力がある。なのに、本塁打の数は金本より全然少ない。

 きっかけは金本氏のひと言だった。鳥谷の打撃中、掛布DCに近寄り、軸となる左膝の使い方について疑問視した。早く投手寄りに向いてしまう左膝の角度をギリギリまで真っすぐに保って回れるか。掛布DCは「俺は右足の踏み込みの使い方が気になった」。右膝を内股気味に引き、力の伝達がワンテンポ遅れる。09年の20本塁打が自己最高。パワーをもてあます鳥谷がアーチを量産するための助言だった。

 前日12日、主力への接し方について「邪魔になる4日間にしちゃいけない。存在を消したい」と、伊藤隼、森田ら若手を重点的に教えるスタンスだった。だが愛する阪神が巨人を倒すためにはリーダーの発奮が欠かせない。ミスタータイガースの血を抑えきれなかった。

 掛布DC

 「鳥谷の阪神」として優勝しなきゃいけない時期。昭和60年は僕らの形で優勝した。星野さんのときは外部からの力を結集して勝った。その力がなくなり、鳥谷の生え抜きリーダーを中心にね。「阿部の巨人」と同じように。勝つために本塁打は不可欠。鳥谷の本塁打に対する気持ちを聞いた。「本塁打を打ちたい」と言っていた。

 現役時、掛布DCは349本塁打を放ち、金本氏は476本塁打を架けた。2人合わせて825本塁打の「視点」は貴重だ。指導後も鳥谷はスタンドティー打撃を繰り返し、入念に動きを確認。「やってみたらということだった。自分で良ければやると思う」とうなずいた。掛布DCが主力を本格的に指導するのは初めて。打倒巨人への情熱を、鳥谷にぶつけた。【酒井俊作】