<日本ハム5-3楽天>◇10日◇札幌ドーム

 日本ハム栗山英樹監督(52)が、佑ちゃんへの非情采配をみせ接戦をものにした。楽天戦で、右肩関節唇損傷から復活を期す斎藤佑樹投手(25)が先発したが、2回途中2安打4四球3失点の乱調に、早々に降板指令。継投策で3回以降は無失点に抑え、打線も3点差をひっくり返した。佑ちゃん降板がカンフル剤となり、同一カード勝ち越しを決め勝率も5割に戻した。

 大きく肩を揺さぶり、少し背中を丸めて姿を現した。勝者の弁を語る栗山監督の足取りが重かった。実らせた執念のタクトを置き、一息ついての記者会見。今季のキーマン斎藤を早期降板させ、つかんだ1勝に少し未練があった。「ダメなモノはダメ」と断じ、出した結論。センチメンタルな思いは捨てた。「悔しかっただろうと思うけれど、自分も悔しい」。心情を重ねたが勝負師に徹しきった。

 スイッチがいきなり入った。1回。三塁側ベンチで動いた。先発の斎藤が先頭の岡島から2者連続四球。ジョーンズに中前先制打を献上すると、着火した。耳打ちされた厚沢投手コーチの表情が険しく曇る。手にはブルペンへつながる受話器。降板準備を開始した。2失点でしのいだが、火種はくすぶっていた。2回。計4個目の四球で1死一、二塁とすると情を断った。

 即断で2番手矢貫へスイッチした。「勝負の形になっていなかった。最初に出ていく人(投手)は魂を示す」。今季2度目の登板機会を与えたが、心身ともに先発の資格不十分と判断を下した。乱調による1回1/3降板は、自身プロ入り最短タイ。栗山監督が就任した1年目の12年5月12日西武戦で9失点(自責4)KOの時と同様、マウンドから降ろした。

 ヒールになり切って、ヒーローを量産した。8日に1軍に昇格し好救援の矢貫が今季初勝利。5回に決勝の逆転3ランの西川が打の主役を張った。前夜に5連敗を止め一夜明け、仕切り直しの大一番。試合開始から約35分、51球しか投げることを許さなかった。斎藤は痛感していた。「悔しいです。ストライクが入らないと投球にならない。しっかり帰って反省します」。カンフル剤になってしまった自分を嘆き今後、奮い立つ新材料にした。

 リスクも覚悟の上の用兵で連勝。勝率5割に復帰した。矢貫と谷元のロング救援要員2枚が捨て身で会心の1勝の伏線をつくった。指揮官は、斎藤へメッセージを送った。「プロなので結果で返すしかない。それを示す責任がある」。その献身さを実感する策として、今日11日から中継ぎ待機する可能性もある。栗山監督が打つ手を打って斎藤を、チームを揺さぶっていく。【高山通史】

 ▼日本ハム斎藤が1回1/3で降板

 先発しての最短降板は11年5月8日ソフトバンク戦(札幌ドーム)での1回。3者凡退に抑えたが、左脇腹痛を訴えわずか10球で退いた。故障やケガなどアクシデントなしの降板では、12年5月12日西武戦(函館)で1回1/3を投げ6安打4四球9失点でKOされたのが最短で、当時と並ぶ早期降板となった。