<広島8-2阪神>◇17日◇マツダスタジアム

 ようやく回ってきた出番で、阪神伊藤和雄投手(24)が躍動した。最速は143キロながらキレのある直球にチェンジアップを交えて、いとも簡単にねじ伏せた。8回、下位打線相手に1回を無安打、2奪三振の快投。わずか13球で封じた。

 「今年初めてだったのでなんとかゼロでと思っていたのでよかった。緊張はしましたが、育成の期間が短かったので、感慨とかはなかったです」

 昨年11月、育成選手契約を結んだ。不調が理由だった。オープン戦で結果を残し11日に支配下登録に返り咲いた。即出場選手登録され、10月3日中日戦以来、561日ぶりの1軍マウンドに立った。

 東京国際大時代の恩師で元広島・古葉監督の言葉が胸にあった。報告の電話をしても、監督はあまり喜ばなかった。「プロなんだから結果が出ないと意味がない。1回を3人で打ち取れば評価される」。支配下くらいで満足するな-。先を見据えた激励で喜びは消え、気合が入った。

 敗戦のなかで光る好投に、和田監督は「堂々とした投球で、1軍でもやっていけるなと」と目を細めた。背番号92は最後に「しっかり結果を出し続けて、勝ちゲームで投げられるようになりたい」と前を見つめた。24歳の再スタートは鮮やかだった。