<西武5-9日本ハム>◇1日◇西武ドーム

 やっと勝った。日本ハム吉川光夫投手(26)が今季初勝利を挙げた。西武打線を相手に初回こそ3失点したが、2回以降は粘りの投球で得点を許さず5回を4安打3失点6三振。パ・リーグ開幕投手では唯一未勝利で2軍調整を余儀なくされるなど苦しんだが、登板5試合目でようやく光が差した。

 長かった闇を、やっと抜け出した。日本ハム吉川が今季1勝目を手にした。5回3失点も大量援護に救われた。力みなぎり4者連続三振を含む計6奪三振。チームメートに導かれるように奮闘した。「打者の方に助けてもらって取れた白星」。感謝に満ちた今季初勝利は格別だった。

 1回に1被弾を含む3失点。出はなをくじかれたが4回に味方打線が爆発。一挙6点で勝ち越しに成功し嫌なムードを断ち切ってくれた。1軍再昇格したこの日の試合前、栗山監督に「魂を見せろ」と訴えかけられた。今季開幕戦で指揮官を裏切った。もう1度、期待に応えたかった。吉川は「今までチームに迷惑をかけてばかりで取り返したいという思いしかなかった」と奮起した。

 開幕投手の重圧は大きくのしかかった。プロ8年目で初めての責任。「今までとは違う独特な雰囲気があった」。大役を終えても開幕から4戦未勝利と不振は続いた。パ・リーグ開幕6投手でただ1人、白星なしの不名誉な看板を背負った。4月19日に出場選手登録を抹消。2軍では1試合に登板するなど、自分自身と向き合う日が続いた。

 意地があった。4歳の長男の一言でプロ野球選手の自分を呪ったことがある。幼稚園の父親参観を欠席したとき「なんで僕のお父さんはいつも来ないの」と悲しんでいたことを妻から聞いた。「(子供は)この仕事をしていて良いと思ったことはないと思う」。いつか子どもが理解してくれる時までー。改めて戦う覚悟を決めた瞬間だった。家族や仲間に支えられ、吉川は前へ進み始めた。【田中彩友美】