<阪神1-0巨人>◇11日◇甲子園

 虎の子の1点はマウロ・ゴメス内野手(29)が起点になった。両手で三塁ベースをつかんだゴメスの元に、コーチャーズボックスから高代コーチが歩み寄った。黒土で真っ黒に汚した緑色のユニホーム。ひざまずきながら2人で手を合わせた。

 「なんでか分からないけれど三塁に行く時は足からうまく(スライディングに)いけないんだ。なぜか頭から、なんだよ」

 2回。ゴメスは先頭打者として第1打席を迎えていた。前日10日ほど極端ではなかったが、巨人セカンド片岡が二塁ベース方向に寄る「ゴメスシフト」はこの日も敷かれた。決して狙ったわけではないものの、打球は巨人ベンチの意図とは反対の右方向へ。逆風にも助けられたラッキーな右前打が、開幕6連勝中だった菅野に黒星をつける糸口に。もちろん、幸運だけではない。次打者今成の左前打で、一塁走者として二塁付近でスピードを落としかけたが、左翼アンダーソンが捕球し終わっていなかった。すぐさまトップスピードに転換。激走&闘魂ヘッドで流れを引き寄せ、鶴岡の適時打も呼び込んだ。

 開幕後の好調さに隠れがちだが2月のキャンプでは右膝痛を訴え、初実戦は3月15日にずれ込んだ。再発を防ぐために現在も試合後には右膝にアイシング処置を施す。和田監督も「大きかったよね、あの判断ね。結構スピードに乗ったらそんなに遅くはない」と褒めちぎった走塁。地道な準備で最高のパフォーマンスを披露した。故郷・ドミニカ共和国では5月最後の日曜日が母の日だ。左手につけたピンクのバンドに視線を向けながら「毎年その日に家族には連絡を取っているよ」。ド迫力のヘッドスライディングがうそのように、試合後の大男は優しい顔に変わっていた。【松本航】