<広島2-1阪神>◇13日◇どらドラパーク米子

 しびれた~。阪神呉昇桓(オ・スンファン)投手(31)が、初のイニング途中登板も、初のイニングまたぎも、衝撃的な投球で乗り越えた。延長10回裏2死満塁でエルドレッドを三振斬り。11回も華麗なフィールディングで危機を脱した。チームはサヨナラ負けを喫したけれど、これからの正念場で守護神が何度もピンチを救ってくれるはずや!

 この男しかいなかった。延長10回、加藤が打たれて2死満塁。絶体絶命のピンチ。セットアッパー福原はいない。三塁側ベンチでは指揮官が立ち上がった。

 和田監督

 スンファンしかいない。

 守護神投入が決まった。16試合目で、来日初のイニング途中の登板。呉昇桓は堂々と胸を張って米子のマウンドへ。相手はこの日まで打率、打点でリーグ2冠を走っていた4番エルドレッド。真っ向勝負だ。高めの威力ある“石直球”で追い込むと最後は、149キロで空振り三振。5球すべてストレートでねじ伏せた。鯉党は迫力にどよめき、虎党は総立ちになった。

 呉昇桓

 準備はしていた。(コーチから)言われていたけど、言われなくても韓国ではいつもやっていたこと。ブルペンで球数を投げるタイプでもないし、準備はできていた。

 ベンチの期待に応えるとそのまま来日初のイニングまたぎとなる延長11回にもマウンドへ。1死から代打田中にスライダーを三塁打された。連続被安打0は10試合で途切れた。またも崖っぷちに立たされた。動揺が走ってもおかしくないが、石仏は眉ひとつ動かさない。1死一、三塁で8番石原。カウント1-1からのスクイズを見透かしたように猛チャージ。投手前バントを捕るとグラブトスでコンマ数秒の勝負を制した。

 呉昇桓

 手でいっていたらセーフになっていた。

 圧倒的な球威、ピンチでも相手の気配を感じる冷静さ、そして、超一流のフィールディングも披露した。

 呉昇桓の奮闘もむなしく、最後は延長12回を託された二神が、サヨナラ弾を浴びた。呉昇桓は「自分が投げたことは何の意味もない。チームが勝たないと」と語ったが、今後ヤマ場を迎えることを考えれば、この日の力投が持つ意味は小さくない。セットアッパー福原不在の現状では、その意味はさらに大きくなる。

 米子に近い境港は人気アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」が生まれた地だが、呉昇桓は「巨人の王さんを題材にした漫画を読んでいた」と、幼少時から漫画も野球漬けだったという。世界の本塁打王にあこがれ、日本野球へ思いをはせていたのか。開幕から1カ月半、すでに呉昇桓は日本球界屈指の守護神と言っても過言ではないだろう。【鈴木忠平】