<巨人5-1広島>◇17日◇東京ドーム

 キューバの主砲が苦境の巨人を救った。新加入の4番フレデリク・セペダ外野手(34)が3回2死一塁で、広島エース前田から来日1号となる2ランを放った。敗れればチームは7年ぶり6連敗で5・5ゲーム差に広げられる危機だったが「赤い稲妻」と評されるキューバの4番の一振りで、勝利を呼び込んだ。

 衝撃がドームに、そしてセペダの背中に走った。3回2死一塁。広島のみならず、日本球界のエースと言っていい前田と相対した。3ボール。真ん中に吸い込まれた147キロ直球を見逃すはずもない。ギリギリまで引きつけて、スイングを始動する。柔軟な肩の可動域で、振り切ったバットが背中にムチのように当たった。強烈な一振りによって約4・2秒で右中間スタンドに打球が運ばれた。

 来日3戦目で衝撃の1号2ラン。「直球だけ狙って思い切り振った。1本打ててホッとしているし、同時に興奮もしている」。巨人入団決定後、キューバで身支度を整えながら昨年のWBCの映像を自ら用意。日本代表クラスの投手を打つことをイメージした。「前田が日本を代表する投手ということは知っていた。1打席目は直球のキレがあり変化球の精度が良かった。2打席目はボールを少し見ようと思った」。冷静に仕留めた。

 来日前は予習をし、来日後は模索を続けた。バットは日替わり状態。デビュー戦はDeNA多村がソフトバンク時代に使っていたもの、2戦目は楽天後藤、この日の試合前練習は阿部のバットを使った。グリップが細く、グリップエンドが小さいものを好む。感性を働かせ、試合では多村型に戻した。日本で印象に残る選手として06年WBCで3本塁打を放った「タムラ」の名前を野手ではイチローとともに挙げていた。日本の才能と認めた男のバットで、歴史的1号を刻んだ。

 まだ来日6日目。試合後のマッサージを入念に受け、98年から在籍する早坂通訳を「中南米系の選手で、ここまで長く時間をかける選手は記憶にない」と驚かせた。試合前の食事も肉を数切れ、食べるだけ。「試合前には食べられないんだ」。欲を満たすことなく、試合にぶつける。飢えたキューバの主砲は記念球について聞かれ、優しく笑った。「大事に取って、家に持ち帰るよ」。永遠の記憶に残る1本となった。【広重竜太郎】

 ▼セペダが来日初アーチ。巨人の4番を務めた外国人選手はセペダを含めて23人いるが、4番で本塁打を打ったのは今年のアンダーソン以来17人目。アンダーソンは4番初試合(4月26日)で1発を記録も、来日通算は5号。来日1号を4番で記録した巨人の外国人選手は初めて。