<阪神2-0ロッテ>◇27日◇甲子園

 完封、今度こそ!

 阪神藤浪晋太郎投手(20)がよみがえった。プロ初のスライド登板に臨み、交流戦負けなしのロッテを8回120球で3安打無失点に封じた。9回は守護神、呉昇桓(オ・スンファン)に譲ったが、約1カ月ぶりの3勝目。最速155キロの直球で押し、2軍降格の可能性もあった背水登板で復活した。チームは再び単独2位に立った。

 走って戻れなかったベンチへ、小走りで向かった。7回、打者3巡目を迎えた藤浪は死球、四球で2死二、三塁のピンチを背負った。打席には元虎戦士の代打ブラゼル。1発出れば逆転の場面にも、力勝負に出た。152キロ、153キロで追い込むと、3球勝負へ迷いはなかった。最後は高めの151キロでスイングを誘うと右拳を握り、躍るようにマウンドを駆け下りた。

 藤浪

 ここ一番で三振を取ることができてよかったです。自分の持ち味でもあるので。四球を連発して打たれて負けていたので、ゾーンで勝負していこうと思っていました。

 8回3安打無失点。本来の持ち味である力勝負で輝きを放った。最速は公式戦自己最多タイの155キロ。外角への直球、カットボールを基本線に、要所で投じたツーシーム、カーブが生きた。今季の交流戦はセ・リーグ本拠地が指名打者制。代打での交代はなかったが、9回はベンチが継投を選択。プロ初完投、完封はお預けとなった。今季初の聖地でのお立ち台では「次以降は完封を目指して頑張っていきたい」と話し、最後にマイクを握ると「これから必死のパッチで頑張ります!」と叫んだ。

 前回20日オリックス戦ではプロ最短の2回6失点で降板。うなだれてベンチに戻った。中西投手コーチからは「最後通告」まで突きつけられた。5月は勝利がなく、冗談交じりに「(次は)2軍にいるかもしれません」と口にしたこともあった。それでも練習では能見のブルペンを観察。体重移動を修正するなど、見つめ直した。

 原点回帰が功を奏した。「感触がよかったから」と、これまでのセットからノーワインドアップでの投球に変えた。カウント2-0にしたのは4度だけとストライクが先行。プロ初のスライド登板にも「パスされるよりはいい」と開き直った。

 高い修正能力で短期間で結果を残した。だが好投に浮かれるでもなく、藤浪は、らしく締めた。「今季は情けない投球ばかりだったので。そのなかでは一番『まし』な投球だったと思います」。苦しんで手にした3勝目から藤浪の逆襲が始まる。【池本泰尚】

 ▼藤浪が今季最長の8イニングを投げ、無失点で3勝目。前回登板まで、5回までは被打率1割6分7厘(126打数21安打)で13失点ながら、6回以降に4割9厘(44打数18安打)、17失点と打ち込まれていた。この日は苦手の後半にも6回の1被安打のみと粘った。