<巨人6-0楽天>◇29日◇東京ドーム

 巨人フレデリク・セペダ外野手(34)が、来日初の満塁本塁打を放ち、エース内海を強力援護した。2点リードの7回2死満塁、楽天辛島の直球を左中間席に運んだ。左打席で2本塁打を放ったが、右打席では初安打で初アーチ。打率1割台の主砲が、ド派手な満塁弾で復調ののろしを上げた。

 最高潮の興奮に包まれる球場の中、セペダは1人冷静だった。2点リードの7回2死二、三塁。前打者の坂本に楽天は、敬遠策。巨人80代目の4番は、「過去に何度も経験のある」という勝負を受けた。カウント2-2から辛島の5球目。真ん中低め135キロ直球に反応した。詰まりながらも、打球は左翼席ギリギリに届いた。決定的な一打。9戦勝ち星のなかった先発内海は、ベンチ前で喜びを爆発させていた。

 セペダは直球を察知していた。並行カウントになり、マウンドで話し合う楽天バッテリー。第1、2打席はともに外角へのチェンジアップで空振り三振だった。1ボール余裕のある状況で“異変”を感じた。「企業秘密だけど、全ての投手が初めての対戦。カウント、打席の中でアジャストしている」。培った勝負勘、嗅覚で直球に決め、淡々とダイヤモンドを1周した。原監督は「見事だった。あの打席でも、真っすぐを待っていた気がする」と評価した。

 キューバ代表は大学の学士号を取得することが義務。セペダも地元ホセ・マルティ大学で体育学の学士号を取得した。スペイン語が公用語の国にあって、一般会話をこなせる程度の英語も操る。頭の回転の良さが、第4打席に出た。

 メモリアルな1本は、右打席での初安打。陰のヒーローは「野球というのは、どんなに素晴らしい選手でもうまくいかないことがある。勝てないことも野球。そしていつか好転するのも野球。(内海の初勝利に)自分が貢献できたのなら良かった」と独特な語り口で勝利を喜んだ。セペダの真面目さがにじみ出ていた。【栗田尚樹】

 ▼セペダが来日初の満塁本塁打。巨人の満塁本塁打は今季4本目だが、3月30日ロペス、4月22日アンダーソン、5月7日アンダーソン、同29日セペダと、すべて外国人選手が打ったもの。同一チームの外国人選手3人が満塁本塁打を記録したのは、80年西武(タイロン2本、ダンカン1本、スティーブ1本)に次いで史上2度目。セ・リーグの球団では初めてだ。