<ソフトバンク3-3ヤクルト>◇1日◇ヤフオクドーム

 パ・リーグ1人勝ちまで「3センチ」だった。ソフトバンクは今季3度目の引き分け。延長12回。松田宣浩内野手(31)のバックスクリーンへ伸びた打球はビデオ判定でも覆らず、あとわずかでサヨナラ弾の二塁打。後続も倒れた。4度の延長に突入したここ5試合で23時間15分を費やしながら、1勝2敗2分け。決定打の出ないV候補に我慢の戦いが続く。

 ぐんぐん伸びる打球を見てナインはフライング気味にベンチを出た。コーチ陣も総立ちだ。12回1死。松田特有の低い弾道がバックスクリーンへ伸びていった。打球はフェンスの向こうで跳ねてグラウンドに戻ってきた…かに見えた。「入ったと思った」松田は一塁を回って右手をかざした。ところがインプレーの判定。慌てて駆け込んだ二塁ベース上で「ウソー!?」と叫んだ。

 約6分間のビデオ判定でも二塁打の結果は覆らない。最近目立ってきた“タイムリー欠乏症”で後続に1本が生まれず、結局引き分けた。秋山監督は「おしかったな」とぽつり漏らし、ベンチ裏で松田に「ウエート、ウエート。あと3センチ!」と声をかけた。「あと1本が出ない」と、打線には発奮を求めた

 これで5月26日の中日戦からの5試合で4試合が延長。「何とも言いようがない。5試合で4回か」とややうんざり。23時間15分(1試合平均4時間39分)を費やし、1勝2敗2分けは手放しに喜べない。好機で1本が出ないだけでなく、ミスで流れを渡す場面も散見された。

 史上初の「ビデオ判定サヨナラ弾」を逃した松田も“ミス”を反省した。「三塁まで行かないと、ですね」。本塁打と思い込んだ走塁はスピードに欠け、二塁到達が精いっぱい。三塁を陥れていれば、細川のフェンス際の左飛が犠牲フライになった可能性もある。小川ヘッドコーチは「喜ぶのは分かるが、ああいうところで進むかどうかが大事」とくぎを刺した。

 他のパ・リーグ5球団が敗れ、1人勝ちするチャンスだった。とはいえ、首位オリックスとのゲーム差を0・5詰めて1・5。半歩前進できたのは、長時間ゲームのせめてもの救いだった。【押谷謙爾】