<日本ハム1-4阪神>◇1日◇札幌ドーム

 その目は打者だけを見つめていた。阪神岩田稔投手(30)は1回、いきなり二塁打を許すなど1死三塁とされ、前日能見から同点弾を放った日本ハム大谷を迎えた。ただでさえ得意ではない立ち上がりだ。四球、失投…。負の要素が頭をよぎれば集中力が低下し、打たれかねない場面。だが気持ちは熱く、頭は冷静だった。

 岩田

 ここを抑えないと勝てないと思って投げました。いかに守りやすいテンポで攻撃につなげるか。守りのリズムがよくないと、流れが出てこないので。考え過ぎないようにですね。

 1ボールの後、2球で追い込み136キロのツーシームで空振り三振。続く中田も抑えて立ち上がりをクリアした。自軍が4点を先制した直後の3回にも、1死一塁から大谷を差し込んで投ゴロ併殺。走者を背負っての3度を含め、全4度の対決で大谷をノーヒットと完全に封じ込めた。8回6安打1失点。早くも4勝目を挙げた。

 低迷の反省から、考えすぎることをやめた。最速144キロの動く直球を軸に、ツーシームを内外角に丁寧に投げ分けた。捕手梅野にも導かれて要所で投じた120キロ台にスライダーも効果はてきめん。「考えないこと、考えても意味がない」と、強いボールを投げることに専念した。

 職場で集中力を増すには、家族との大切な時間が欠かせない。先月上旬、岩田は夫人と3人の子供を連れて映画館に出かけた。お目当ては大ヒット中の「アナと雪の女王」。流行となった歌のシーンでは、子供たちと口ずさんだ。「吹き替えだったんだけど、子供に『もうすぐ始まるぞ』ってあおりながらね」。笑顔に囲まれると心はくつろぎ、そして引き締まった。

 次戦は中5日で7日オリックス戦(甲子園)先発が濃厚。引退覚悟で挑むシーズンで、先発の一角の座を確かなものにしようとしているどころか、チーム勝ち頭の5勝能見に次ぎ、メッセンジャーと並ぶ4勝。登板6戦すべてで責任投球回数をクリアし、勝利数も自己最速ペースで稼いでいる。チームの連敗も止めた。もはや復活の域では収まらない。スケールアップした岩田が、どっしりと構えている。【池本泰尚】