<楽天4-3阪神>◇3日◇コボスタ宮城

 狐につままれたような敗戦だ。阪神メッセンジャーが今季4度目の完封をかけた9回、落とし穴にはまった。1失点で2点差に迫られ、守護神・呉昇桓(オ・スンファン)も楽天の勢いにのまれた。最後は牧田に右越え三塁打を許し、3点リードからのサヨナラ負け。呪われたように、カード初戦をまた落とした。9カード連続は95年以来となった。

 悪夢だった。勝利のジェット風船ではなく、メガホンが飛んだ。場外ではタテジマを着たファンが暴れていた。東北の虎党には、まさに天国から地獄。最後は守護神が打たれた。フェンスに跳ね返った白球が無情にも右翼を転々とした。完封勝ちムードが一転、カード初戦に9連敗。95年に21カード連続で初戦を落として以来の、負のサイクルにはまりこんだ。

 呉昇桓

 難しいことはなかった。それが自分の仕事なので。準備はもちろん、できていた。

 タフなメッセンジャーが突然の限界だった。9回、2連打で1点を失って降板。緊急救援の呉昇桓は準備の難しさを言い訳にしなかったが、本来のキレがなかった。何とかこぎ着けた2死から岡島につながれ、ジョーンズはストレートの四球。誕生日の牧田に、いとも簡単にはじき返された。

 さすがの指揮官もショックありありだ。問いかけに「う~ん」とうなずきながら、後悔の言葉を続けた。

 後悔(1)

 3-0だった9回1死の攻撃、メッセンジャーは四球を選んだ。そのまま三塁まで進むなど余計な体力を使った。「その前に塁に長くいた影響があったかもしれない。まあ、こうなってみると、そう(三振の指示)しないといけなかったかな」。

 後悔(2)

 最後は俊介に代えたが、9回も左翼マートンで突入した。後藤の適時三塁打はマートンの頭上を越えた。守備のうまい選手なら…。「流れを変えたくないのと、何かあった時に次あるわけだし」。最後も緒方のクッション処理はぎこちなかった。残る外野手は福留だったが…。全てが「たられば」の結果論になるが、最善を尽くしたとは言い切れない試合だった。

 和田監督

 振り返るのもあれやけど、今日はあの3点で取らんといかん。お互い譲らん状態で、何とか1点取ってね。いい形で追加点も取れたから。逃げ切らんとアカンところやったけど…。

 右のエースが奮投した。4番は追加弾。ゴタゴタあったマートンが出直して、則本の3試合連続完封を阻止した。なのに…なぜ…。広島と巨人が負けた絶好の夜に痛い黒星。4位中日もいよいよ2ゲーム差に迫ってきた。虎のしっぽに火は付くのか。引きずっているようでは、わずかな貯金が底をつく。【近間康隆】

 ▼呉昇桓が2敗目。5月13日広島戦(米子)10回2死満塁で登板して以来の走者を置いた状況での登板となったが、リードを守れず。5月28日西武戦(甲子園)で、9回に自身の失策などで3失点し敗れて以来の救援失敗となった。

 ▼阪神のサヨナラ負けは今季4度目。3点リードを守れずサヨナラ負けは、04年8月11日横浜戦(札幌ドーム)以来、10年ぶり。このときは4-4の延長10回表、代打八木、今岡の連続二塁打で3点を勝ち越し、7-4とした。だがその裏から登板したマイヤーズが先頭石井から3連打され、無死満塁。4番ウッズに中堅右に本塁打を許し、8-7のサヨナラ負けとなった。