<広島7-4日本ハム>◇22日◇マツダスタジアム

 仰天のサヨナラ場外弾だ!

 広島ライネル・ロサリオ外野手(25)が同点の延長10回に自身初のサヨナラ弾を放ち、チームを今季初の5連勝に導いた。左翼2階席後方の防球ネットに直撃する推定140メートル弾。球団初となるシーズン5度目のサヨナラ弾を記録し、9連敗を喫するなど苦しんだ交流戦を最高の形で締めくくった。

 重圧に押しつぶされてもおかしくない場面。ロサリオは打席で白い歯をこぼす余裕があった。「リラックス、と自分に言い聞かせていたんだ」。同点の延長10回裏2死一、二塁。増井の真ん中フォークを見逃さなかった。大飛球は目で追うのが難しいほどのスピードで曇り空に消えた。左翼2階席後方の防球ネットに弾むサヨナラ3ランだ。

 「このホームランはあなたのために打ちました!」

 お立ち台で叫んだ相手は17歳年上のサンディ夫人(42)だった。今月9日に来日した家族はマツダスタジアムでの試合観戦を欠かさない。この日も妻と5歳の息子オナシス君、1歳の娘ビクトリアちゃんらが球場に駆けつけていた。いつも好物の豆料理をたらふく準備してくれる愛妻に、劇的な今季7号をささげた。

 家族との絆は左腕に巻きつけてある。赤色と黒色のミサンガだ。黒色は3年前に自ら購入したが、赤色は妻が母国ドミニカで昨年買ってくれた宝物だと言う。「大切にしているよ」。グラブに名前を刻んである娘は、本塁打選手に贈られるスラィリー人形が大好き。この日もミサンガを揺らして1発を放ち、家族を喜ばせた。これで1軍再昇格後、全8試合で安打を放ち、5戦連続打点となった。

 2番手久本から救援4人が無失点リレーを続け、最後は年俸1000万円の格安助っ人が試合を決めた。9連敗後に今季初の5連勝で交流戦を終了。シーズン5度目のサヨナラ弾は早くも球団史上初の快挙だ。この日も3発が飛び出し、交流戦24試合で27発は12球団最多、シーズン66試合で76発も両リーグ最多。それでも野村監督は浮かれない。

 「うちがホームランが多いのはうれしいけど、おかしなこと。つないでいかないと。連勝も連敗もして怖さを感じたと思う。ひとつでも勝っていくことが大事になる」。リーグ戦再開後もカープらしさを追求し、1日でも早く首位巨人の背中をつかむ。【佐井陽介】

 ▼広島が今季5本目のサヨナラ本塁打。サヨナラ本塁打のチームシーズン最多は93年ヤクルトの9本だが、広島では過去4度あった4本を上回る球団新記録となった。今季の5本はすべて延長戦。延長サヨナラ弾をシーズン5本は69年阪急に並ぶプロ野球最多タイ。今季セ・リーグのサヨナラ本塁打は全5本をすべて広島勢が放っている。