<広島9-2中日>◇30日◇マツダスタジアム

 平和を願う思いがバットに込められた。広島は年に1度の「ピースナイタ-」で、4位中日に大勝した。1点を追う3回に2番菊池涼介内野手(24)の3ランなど一挙8安打7得点で大逆転。首位巨人との3ゲーム差、2位阪神との0・5ゲーム差をキープし、4位中日とのゲーム差を2・5に広げた。

 左袖のワッペンが光り輝く。カープ戦士が平和を体で感じながら、1人1人タスキをつないだ。1点を追う3回、先頭の8番会沢翼捕手(26)が三遊間を抜き、反撃の号砲を鳴らす。犠打を挟んで1番堂林翔太内野手(22)は中前打。1死一、三塁。2番菊池が浜田の外角高めスライダーをとらえ、逆転6号3ランをバックスクリーンに運んだ。

 菊池

 最低でも犠飛をと思って、高めだけを狙っていた。人生初のバックスクリーン。最高です!

 5月18日巨人戦以来の菊池弾がナインを勢いづけ、堂林から5連打を記録。7番梵英心内野手(33)にも左中間3ランが飛び出すなど、この回打者11人8安打で7得点だ。年に1度の大事な一戦、猛攻で広島に笑顔を届けた。

 この日は「ピースナイタ-2014」だった。「ピースナイタ-」は核兵器廃絶を訴え、平和を祈念するイベント。今年7年目を迎え、カープナイン、審判員はユニホームの左袖にピースワッペンをつけていた。5回裏終了時には観客が緑色のピースポスターを掲げ、球場全体をグリーンに染めて平和を祈った。

 始球式は広島OBの山本一義氏(76=日刊スポーツ評論家)が行った。広島出身の山本氏は45年8月6日に原爆が投下された時に7歳で、父が被爆したと言う。「このチームは勝つことが平和につながる。カープが勝つことで平和を訴える発信力が強くなる」。大先輩の熱い思いに応える快勝。自身初の1試合5安打を決めた堂林は「野球をできる喜びを感じながらやっていきたい」と力を込めた。

 菊池は守備でも6点リードを奪った直後の4回2死二、三塁、8番松井雅の一、二塁間ゴロに飛びつき、間一髪でアウトにした。野村監督が「チームを救うビッグプレー」と絶賛する美技だった。前日29日中日戦では積極走塁がミスにつながったが、「失敗を恐れず前を向いていこうと、攻める気持ちだった」。野球を生業にできる喜びが全身からにじみ出ていた。

 カープには使命がある。プレーを通じて平和を訴えられる、唯一無二のチームだ。「勝てばすぐ(順位が)上がるし、負ければすぐ落ちる。必死で頑張るだけ」と菊池。23年ぶりのV奪回へ。今、広島は一致団結している。【佐井陽介】