<ソフトバンク4-3日本ハム>◇9日◇ヤフオクドーム

 初めまして、オーナーと同じ名前の塚田正義です!

 ソフトバンクが5度目サヨナラ勝ちで、今季最長の7連勝を飾った。延長10回に決めたのはプロ3年目、ウエスタンの本塁打キング塚田正義内野手(25)だ。1死一、三塁からプロ初打点となる中犠飛。9回に3点リードを追いつかれるいやなムードを吹き飛ばし、2位オリックスと今季最大4ゲーム差に広げた。

 決めたのは伏兵だった。塚田は1死一、三塁から代打で登場。1日のプロ初打席で3球三振を喫していた日本ハム宮西と対戦した。初球を思い切り振り抜いて中犠飛。一塁ベースを回ると内川に抱きつかれ、あっという間にもみくちゃになった。初のお立ち台では巨人阿部ばりに「最高です!」と絶叫。マイクを渡され、ファンに向かって自己紹介した。

 「3年目の塚田正義です。下の名前は孫正義オーナーと一緒です。僕がホークスに入った理由を友達に『お前、オーナーと一緒だから(縁故)だろう』とばかにされました。皆さんの前でプレーできて本当に幸せです!」。1日に1軍初昇格して3打席目。プロ初安打の前にプロ初打点が殊勲の一打となった。

 白鴎大1年時には、教授を務めていた日本ハム栗山監督の「スポーツ健康科学」の授業を受けた。単位をくれた以外に、野球部員に限り「授業の時間を練習にあててもいい」と異例の出席免除でバックアップしてくれた。ドラフト後にあいさつに行くと「頑張れよ」と励ましてくれた。思わぬ形で「恩返し」ができた。

 この日は母早苗さんの50歳の誕生日だった。日付が変わるころにLINE(ライン)で祝福メール。「頑張りなさいよ」と返事があった。記念のボールは「プレゼントに」と、ポケットにしまった。入団1年目に右膝関節の前十字靱帯(じんたい)再建術を受けた。内野手として入団したが、送球難もあり外野転向を経験。苦しい時間を乗り越えた。「けがをしたから今がある。より野球に真剣に取り組めるようになった。やっとスタートかなと思う」。喜びをかみしめた。

 先発中田が8回まで完封ペース。9回に3点を追いつかれた。流れは完全に相手かと思いきや、地力の差を発揮して劇的勝利。オリックスを4ゲーム差と引き離した。秋山監督は守備のミスなどを嘆きながらも「塚田くんはちゃんと仕事して良かった」とたたえた。「サヨナラ打は野球人生で記憶にない。次はヒットを打てるように頑張ります」と塚田。強いチームほど、日替わりでヒーローが生まれる。【大池和幸】